スピノンフェルミ面とスピノン対凝縮:分裂と縺れが創るスピン量子相の探索
【研究キーワード】
スピン液体 / スピノンフェルミ面 / 強磁場 / 核磁気共鳴 / 輸送特性 / 強相関電子系 / フラストレーション / 量子スピン液体 / スピノン / 分子性物質
【研究成果の概要】
本研究課題は、「スピン液体」の微視的状態の理解を目指している。対象とする物質は有機スピン液体候補物質であるk-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3とEtMe3Sb[Pd(dmit)2]2である。
研究初年度では、スピン液体を説明する一つのモデルであるスピンノンフェルミ面の検出を目指して核磁気共鳴および高磁場物性の測定を行った。
スピノンのフェルミ面が存在する場合、物理量に磁場に対する量子振動が期待される。この検出を目的として、東京大学物性研、国際超強磁場科学研究施設のパルス磁場を利用してトルク、磁気熱量効果、誘電率、超音波速度、電気抵抗測定を行った。両塩ともに50 Telaまで明瞭な量子振動は観測されなかった。一方で、k-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3はEtMe3Sb[Pd(dmit)2]2よりも大きな磁場依存性を示し、6 Kという特徴的な温度で磁気熱量効果と超音波速度の磁場依存性に顕著な変化が見られた。これに対してEtMe3Sb[Pd(dmit)2]2では特徴的な温度の存在は確認できないなど両塩に違いがみられた。
また、k-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3について1H NMR測定を常圧で行った結果、スピン-格子緩和率は6K付近までは13C NMRのそれと同じ温度依存性を示すのに対し、それ以下では違いが生じ、3K付近でピークを観測した。この起源を探るべく、磁場強度および印加角度依存性の測定を行い、試料依存性も調べた。その結果、緩和率のピーク構造は、異なる試料でも観測され、磁場方向依存性が無く、磁場強度とともに抑制されることが分かった。
また、ドープされたスピン液体の候補物質として注目されているk-(BEDT-TTF)4Hg2.89Br8の13C NMR研究も開始した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
宮川 和也 | 東京大学 | 大学院工学系研究科(工学部) | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的研究(開拓)
【研究期間】2021-07-09 - 2024-03-31
【配分額】25,350千円 (直接経費: 19,500千円、間接経費: 5,850千円)