顕微ファラデー回転法による縮退した秩序構造を持つスピン系の磁化緩和の研究
【研究分野】固体物性
【研究キーワード】
磁化長時間緩和 / ファラデー効果 / スピングラス / 顕微測定 / 磁気挿図 / 磁気光学 / 磁気相図 / 競合磁気系 / フアラデー効果 / 磁気相転移 / ランダム磁場効果 / フアラデ-効果
【研究成果の概要】
相互作用に競合があるため縮退した秩序構造を伴う系の物理においては、試料の不均質性が問題の本質を被い隠す可能性が高い。この困難を回避する試みとして、本研究では、平成3年から5年までの3年間、競合磁気系を対象に、均質性の高い試料領域を結像光学の原理で選択的に捉える実験装置を建設し、それを用いたファワデー効果や光複屈折の測定を通して秩序構造や磁化の緩和機構を解明する活動を続けた。主な作業は、主要備品として初年度購入した光学用超伝導電磁石と次年度の顕微鏡システムを結合させる装置の完成を目指すものであった。その結果、光学用超伝導電磁石を用いた磁気光効果(複屈折)システムの完成と、顕微鏡を用いた磁気光効果測定システムの試運転にまだこぎつけたが、両システムを結合させて測定する最終目的までには到らなかった。しかし、Ising混晶Fel-xMgxCl_2において、ランダム磁場効果やスピングラス秩序に起因する磁化の長時間緩和現象のキャラクタリイゼーションを行った。また、競合する磁気系の新しい問題として、六方晶層状格子磁性体MnX_2の一次転移を伴う逐次相転移において、それぞれの秩序構造の同定と逐次相転移の起源の解明を行い、更に、六方晶ABX_3型三角格子反強磁性体のP6_3cmの空間群を持つKNiCl_3系の物質群で強誘電性を見いだした。後者については、反強磁性と強誘電性秩序相の競合という新しい縮退系の物理を切り開いた。他方、光学用超伝導電磁石を用いた磁気光効果システムによる実験も稼働し始め、三角格子反強磁性体RbMnBr_3、層状格子強磁性体NiBr_2などの磁場中相転移の観測にも成功した。このように、顕微システムの定常的稼働にはもう少しの時間を要するが、周辺装置は完成し、周辺の物理も多彩な問題を提起しており、われわれの目指した研究の基盤が予想以上の広がりを持つに到っている。
【研究代表者】