自己変調過程より生じる臨界ゆらぎの特性解明と現実系への応用
【研究分野】数理物理・物性基礎
【研究キーワード】
自己変調過程 / データ解析 / 確率過程 / 自己相関関数 / 最適移動平均 / 市場価格変動 / ポテンシャル / ベキ分布 / 臨界現象 / 1/fスペクトル
【研究成果の概要】
過去の変位の履歴の移動平均値に乗算型のノイズを付加し、さらに、加算型のノイズを加えるランダムな確率過程である自己変調過程に関連した現象の解析を進めた。
まず、自己変調過程の応用として先駆的な役割を担ってきた市場の取引の発生過程のデータ解析に関して研究を進め、残差項のゆらぎを無相関にするような移動平均の重み付けを自動的に推定する方法を確立した。外国為替市場の取引間隔の時系列データに関して、ここで開発した手法を適用すると、ティック時間ごとに重みが約0.75倍に減少する重みが得られた。その結果として得られる残渣の変動はほぼ無相関にできることが確認される。ティック間隔はおよそ10秒のオーダーであり、この結果は2分間程度の移動平均が最適になるという既に当該研究者が発見している結果をより精密化することになる。
この方法は、取引間隔だけでなく、市場価格の変動そのものについても適用し、市場価格の変動から無相関なノイズを取り除くことができた。この最適移動平均を適用した変動は市場を特徴付ける動力学の情報を持つことが確認され、市場に潜むポテンシャル力の存在を確認し、それを含んだような市場価格の確率動力学の定式化を行った。得られた方程式を変形すると、おいてポテンシャルが線形な場合には、市場価格の変位に関する自己変調過程が得られ、ふたたび、自己変調過程の重要性が認識された。
市場価格の確率動力学的記述は、非常に汎用性も実用性も高く、ARCHモデルなどの金融工学での定式化を包含するような体系である。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2004 - 2006
【配分額】3,200千円 (直接経費: 3,200千円)