量子古典ハイブリッド計算技術による物質シミュレーション高速化手法の研究
【研究キーワード】
量子コンピューティング / 量子アニーリング / イジングマシン / 量子臨界現象 / 量子古典ハイブリッドアルゴリズム / 物質シミュレーション / 量子コンピュータ / 機械学習
【研究成果の概要】
本研究課題において,2021年度は主に以下の2点の研究を行った.第一に,量子コンピューティング技術の一つである量子アニーリングの性能を理論的に検討するための研究,第二に,ブラックボックス連続最適化に対する量子アニーリング等イジングマシンの適用手法の提案の研究である.
第一の研究では,相互作用が非一様な1次元イジングモデルに対し,相互作用の非一様性と相関のある非一様性を課した横磁場を印加した統計力学モデルを用いた解析を行った.量子アニーリングにおいては,エネルギーギャップが小さくなることにより,その性能が低減してしまうという課題がある.エネルギーギャップが小さくなる問題は様々なものが知られているが,中でも,量子相転移を引き起こす系については,系統的な解析が可能であるため,理論的に量子アニーリングの検討を進める上での雛形となる.そのような背景から,上記のモデルを取り扱った.本研究で取り扱うモデルは,自由フェルミオン系に変換することが可能である.そのため,大規模数値計算により,エネルギーギャップのシステムサイズ依存性,ならびに,動的臨界指数を得ることが可能である.その結果,相互作用の非一様性と相関のある非一様性を横磁場に課した場合,相互作用の非一様性とは相関の無い非一様性を横磁場に課した場合と量子相転移のユニヴァーサリティクラスが変わったことを見出した.また,動的臨界指数の上限並びに下限を解析的に得ることに成功した.この結果は,Annals of Physicsにて報告した.
第二の研究では,ブラックボックス連続最適化に対し量子アニーリング等イジングマシンを適用する手法を新たに提案した.本研究成果は,本研究課題で狙う物質シミュレーションの高速化につながると期待される.本研究成果は,プレプリントサーバ(arXiv:2104.14778)や国際会議AQC2021にて報告した.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
白井 達彦 | 早稲田大学 | 理工学術院 | 講師(任期付) | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)