超高分解能赤外分光装置の同時観測によるオゾン層破壊関連物質の高度分布測定
【研究分野】超高層物理学
【研究キーワード】
赤外分光 / FTIR / 高度分布 / リトリ-バル / 成層圏 / オゾン / 微量気体 / レーザーヘテロダイン / 大気化学
【研究成果の概要】
研究実施計画に従い、平成8年10月に東北大学の移動型レーザーヘテロダイン赤外分光計(TDLHS)を、名古屋大学母子里観測所に設置した。そこで、名古屋大学のフーリエ変換赤外分光器(FTIR)との赤外分光同時観測を約2週間にわたって実施した。この間、オゾン(O3)、亜酸化窒素(N2O)、塩酸(HCl)、硝酸(HNO3)、弗化水素(HF)などの微量気体成分の吸収スペクトルを観測した。また、同時観測期間中オゾンゾンデ観測も行い、オゾンの鉛直分布の同時観測データを得た。
平成9年度は、昨年度のレーザーヘテロダイン赤外分光計(TDLHS)及びフーリエ変換赤外分光器(FTIR)同時観測で得られた赤外分光データの詳細な解析を行った。その結果、オゾン(O3)、塩化水素(HCl)、弗化水素(HF)などの微量気体成分の高度分布を導出した。その結果、2つの観測装置で得られたデータを解析することで導出されたオゾンの鉛直分布は、解析アルゴリズムの誤差範囲でよく一致することが判った。
次に、これら解析アルゴリズムの信憑性を確認するために、オゾンゾンデによるオゾン鉛直分布との統計的な比較を行った。赤外分光観測と同時に行った計17回のオゾンゾンデ観測によるオゾンの鉛直分布を、赤外分光観測によって得られたオゾンの鉛直分布と比較した結果、分光観測のもっとも感度の高い高度18-26kmの領域では、オゾン混合比の値は10%以内で一致した。一方、それ以外の領域では赤外分光観測による高度分布導出の感度が低下するため、高度10km以下では最大40%、高度30km以上では最大20%の誤差が生じることが判った。これらの結果により、地上における高分解能での赤外分光観測は、微量気体成分の鉛直分布の導出に有効であることが実証された。
【研究代表者】