無衝突衝撃波において、超音速の衝撃波上流から亜音速の下流に至る衝撃波遷移領域では、プラズマ波動を介して効率よくイオンから電子にエネルギーが輸送されていることが知られている。また同様に波動-粒子相互作用によって、電子加熱だけでなく非熱的な高エネルギー電子成分も形成されることが期待されている。本研究では、従来の衝撃波フェルミ加速よりも早い時間スケールで高エネルギー電子を形成する過程を、数値シミュレーションを用いて明らかにすることが出来た。これまで衝撃波遷移領域では、乱流的プラズマ波動が重要な役割を果たすと考えられてきたが、最近の磁気圏衛星観測によってソリトン的大振幅の静電的波動も形成されていることが発見された。本研究ではこのソリトン的波動に着目して、どのようにして衝撃波領域に静電的ソリトン波動が形成されるのか、またそのソリトンが電子加速にどのように関連するのかを研究した。本研究期間に得られた成果は、大規模数値シミュレーションに基づく理論計算から、(1)臨界マッハ数を超えると、衝撃波から反射される一部のイオンと衝撃波に向かって流れ込む電子の作る2流体不安定を介して、衝撃波遷移領域に静電的ソリトン波動が形成されること、(2)ソリトン波動に共鳴する電子軌道が存在し、衝撃波波乗り加速(サーフィン加速)を介して選択的に電子が加速され非熱的成分を形成できること、(3)マッハ数が数10を超えると、電子は相対論的エネルギーまで際限なく加速できることなどである。本研究で見出された新しい電子サーフィン加速は、超新星残骸での高エネルギー電子成分や惑星間空間での衝撃波加速での電子加速として非常に有力な加速過程であることがわかった。
【研究分担者】 |
菅野 延枝(島田 延枝) | 東京大学 | 大学院・理学系研究科 | 日本学術振興会 特別研究員 |
SUGANO Nobue (SHIMADA Nobue) | Graduate School of Science, The University of Tokyo JSPS Research Fellow |
菅野 延江(島田 延江) | 東京大学 | 大学院・理学系研究科 | 日本学術振興会特別研究員 |
菅野 延枝 (島田 延枝) | 東京大学 | 大学院・理学系研究科 | 日本学術振興会特別研究員 |
|
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2000 - 2001
【配分額】3,500千円 (直接経費: 3,500千円)