惑星オービターからの大気観測に用いられる赤外撮像素子の開発
【研究分野】超高層物理学
【研究キーワード】
金星大気 / 赤外撮像素子 / 金星 / 気象 / イメージング / 赤外線 / ショットキーバリヤ
【研究成果の概要】
金星は厚い雲にさえぎられて、70km以下の高度での大気の動きは捉えられなかったが、近年、赤外領域の光が厚い雲の層を通り抜ける事がわかり、下部の雲の動きや金星地表面の様子を雲層を透かして惑星の外から見ることが可能となった。そこで、この波長に対象を絞ったカメラを金星を周回する探査機に搭載し、金星の地表面や、雲をトレーサーとした大気の動きを調べる事を目指している。この様な研究方法は、世界でも初の試みである。
本課題においてはこの金星探査から、その先の惑星探査にわたって使用可能な赤外カメラ用撮像素子および光学系を開発した。特に近赤外域(波長1-3ミクロン)と中間赤外域(8-12ミクロン)の2つのバンドでの撮像素子開発および光学系開発が重要な課題であった。前者は金星では雲の底部(高度50-70km)からの放射に対応し、大気の運動を見ることが可能となる。これに対して後者は雲の頂上部からの温度放射に対応する。
結果として、放射線に耐性のある撮像素子として近赤外域ではPtSiショッキー素子を、中間赤外域ではボロメターアレイを用いることが最良であることが判った。ショッキー素子は60Kまでの冷却が必要であるが、この冷凍技術についても一段スターリング冷凍機で目的を達成できることが実証された。
今回の研究に比較的近いものとして天文分野における赤外観測機の開発が挙げられる。かの分野では特に遠くの暗い星や誕生間近の惑星系等を研究対象とするため、赤外素子を冷却し熱雑音を極限まで抑える技術を培ってきた。しかしながら、惑星探査機に搭載することになれば、到着までの年月を含めて長期間放射線にさらされ、また熱的にも地上の天文観測とは比べられぬほど過酷な条件にさらされる。今回特に惑星オービター搭載に適した赤外素子の開発が求められたが、その目的は十分に達成された。
【研究代表者】