ダイヤモンド中の窒素欠陥ノイズの分布解明によるコヒーレンス時間の2ケタ伸長
【研究キーワード】
量子センシング / ダイヤモンド / 量子制御 / ノイズ・スぺクトロスコピー / NMR / 電子スピン / コヒーレンス
【研究成果の概要】
ダイヤモンド中の窒素・空孔欠陥 (NVセンター)は、次世代IoTへの利用が期待される量子センサのひとつであり、幅広い温度・圧力環境で高感度・高解像度を提供可能である。これらの性能のうち感度については、スピン射影雑音限界やショット雑音限界等の標準量子限界によって律速される。特に、スピン射影雑音限界を決める要因のひとつであるNVスピンのコヒーレンス時間は、窒素欠陥 (P1センター)由来のノイズにより制限されており、まだまだ伸長の余地がある。そこで本研究では、P1センターのノイズ分布を解明するとともに、コヒーレンス時間を物理限界である縦緩和時間T1(~500us)まで伸長する手法を確立することを目標としている。
2021年度は、前年度に構築したNVスピンおよびP1スピンのパルス制御が可能な装置を用いて、スピンコヒーレンス時間の伸長度合いの測定に取り組んだ。NVセンターに対してはラムジー・パルス列を印加してT2*コヒーレンス時間を計測できるようにした。一方で、P1センターに対しては、①RFを連続波として印加するスピンロック法、②RFπパルスを一度印加するスピン・エコー法、③RF πパルスを等間隔で多数印加する動的減結合法をそれぞれ適用し、NVセンターのT2*コヒーレンス時間を解析した。その結果、RF強度およびラムジー歳差運動時間によって①または③の一方が有利になることが少しずつわかってきている。
次年度は、どのような条件でどの手法が有利になるのかを包括的に調査するとともに、これまでに構築してきたOrnstein-Uhlenbeck過程に従う量子多体系モンテカルロ・シミュレーション基盤やノイズ・スぺクトロスコピー理論を用いて上記の違いを説明することを目標とする。最終的には、本手法によるコヒーレンス時間の理論的限界を明らかにし、スピン射影雑音限界の改善度を定量的に評価することを目指す。
【研究代表者】
【研究種目】研究活動スタート支援
【研究期間】2020-09-11 - 2023-03-31
【配分額】2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)