クライオ電顕画像から蛋白質の動的構造を描写するための新規計算科学手法の確立と応用
【研究キーワード】
クライオ電子顕微鏡 / 蛋白質の動的構造 / 計算科学 / X線構造解析 / 蛋白質運動の自由エネルギー地形 / 自由エネルギー地形 / 蛋白質水和構造 / 機械学習 / X線回折・散乱 / 光受容蛋白質フィトクロムB / 光受容蛋白質フォトトロピン2 / 分子動力学計算
【研究成果の概要】
(1)三次元コンボリューション・フィルターを用い、コンボリューション層と全結合層から構成された八種類の水和構造予測ニューラル・ネットワークを構築した。各々、高分解能低温X線結晶構造から抽出した5,310,762個の局所水和構造パターンを学習させ、テストデータに対する損失関数で学習を評価した。最良の結果をもたらすニューラル・ネットワークを選定し、学習データに含まれない蛋白質の水和構造予測に適用して、予測水和分布確率をX線結晶構造解析の水和構造位置と比較し、満足できる結果を得た。
(2)グルタミン酸脱水素酵素と補酵素混合溶液に対するクライオ電子顕微鏡構造解析を通じて、同酵素蛋白質が補酵素を結合する際に多数の準安定な結合部位間を逡巡しながら最終結合位置に至っていることが観察できた。準安定な結合は、酵素蛋白質の大規模ドメイン運動と強く相関している可能性が示唆された。また、これまでの10倍以上の電子顕微鏡イメージを異なる装置・条件下で得、ダイナミクスをマニフォールド学習で解析することを目指し、観察像を統合するべく、デフォーカスが異なる観察像を比較して統合の可否を検討した。デフォーカスが異なっていても同じ静電ポテンシャル像が得られたことから、将来の解析に期待が持てた。
(3)植物の光受容蛋白質フィトクロムBとフォトトロピン2について、従来の精製プロトコルを改善し、短時間三ステップでの高純度精製を可能とした。それぞれ結晶化を試み、生じる凝集体中に結晶核が存在しないかを、SPring-8でのX線回折実験で確かめた。フィトクロムBについては、低分解能ではあるが、先に提案したX線小角散乱モデルと一致するクライオ電子顕微鏡三次元構造を得た。フォトトロピン2については、試料凍結時の濃度とpHを検討する必要があることが明らかとなった。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)