イオン液体の示すメソスケール協同現象の計算科学研究:遅い緩和と界面ゆらぎ
【研究キーワード】
イオン液体 / 回転緩和 / 分子動力学 / Stokes-Einstein-Debye則 / 自己相関関数 / 分子動力学法 / GPGPU / StokesーEinsteinーDebye則 / 電解液キャパシタ / メソフェーズ / ガラス転移 / 界面ゆらぎ / 液晶相
【研究成果の概要】
本年度は、過冷却状態にあるアルキルイミダゾリウムイオン液体における並進・回転運動のカップリング関係について、昨年度までに得られた成果の取りまとめを行った。この論文の取りまとめの過程において、アルキル鎖配向の時間発展が、アルキル鎖長に大きく定性的影響を受けることが判明した。アルキル鎖長が短い時には、分子配置の変化と同時に大角度での回転が起きる。他方、鎖長が大きくなると、この運動が拡散的な運動に移行し、回転デバイ則を回復する。この系ではカチオンの極性部・非極性部同士が互いに集合することによってドメインを形成することによって立体運動が阻害され、このことが大角度ジャンプ運動を禁止する原因になっていると推測される。実際に、この立体障害の中での一分子運動の様子を可視化する形で説明を施した。また、通常の非荷電のガラス形成液体とは異なって、Stokes-Einstein (SE) 則が高温領域でも破れており、緩和時間と粘性の比例関係の仮定が成立しないことを明らかにした。また、そのもとでSE則および Stokes-Einstein-Debye則の破れの解析を行った。以上の結果は原著論文として投稿中であるが、査読に時間を要しており、出版は2022年度に繰り下げとなっている。
また、イオン液体を含むガラス形成液体にみられる類似した速度の時間相関解析および応力緩和の低温・長時間での解析を、前年度から継続して実施した。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)