機械学習に基づくアルカリ水電解用酸化物触媒の設計と高耐久水電解セルシステムの構築
【研究キーワード】
アルカリ水電解 / 電気化学触媒 / 機械学習 / 密度汎関数理論 / 酸素発生反応 / 金属酸化物 / 構造因子 / Fe―O結合長 / 金属リン酸化物 / 水素発生反応
【研究成果の概要】
令和3年度は、令和2年度に実施した機械学習とDFT計算により得られた知見により高活性な卑金属触媒の開発、および触媒と結晶構造の間に眠る未知の法則の解明に取り組んだ。
まず水電解アノードの酸素発生反応(OER)用触媒の結晶構造の制御による高活性化を目指した。大きな金属-金属配位数から高いOER活性が期待されるレイヤー型コバルト-マンガン複合酸化物をグラフェン担体上で直接成長させ微粒子化することで、既報の遷移金属二元酸化物の中で最高の触媒活性を発揮させた。(Chem. Commun., 57, 9052-9055, 2021. Inside Back Coverに採用)
次に、安価な卑金属である鉄に着目し、鉄系酸化物のOER活性を決定する結晶構造の因子の解明を行った。実験および機械学習による回帰分析の結果、構造パラメータのうちFe-O結合長がOER活性に対する最重要因子であることを見出し、Fe-O結合長が短いほどOER活性が向上するという、OER活性に関する未知の法則を発見した。またこの法則は触媒材料の元素組成と鉄の価数に無関係であることを明らかにした。さらに、当法則は、Perovskite, Spinel, Brownmillerite, Stuffed Tridymite, M-type Hexaferrite, Ruddlesden-Popper型を含む多様な構造カテゴリーの鉄系複合酸化物に適用可能であることも示した。(ChemElectroChem, 9, e202101679, 2022. Front Coverに採用、Cover Profileで紹介)
以上のように、Fe-O結合長というバルクの結晶構造のパラメータによって触媒粒子表面で進行する反応の活性を記述可能であることを明らかにし、水電解電極反応の触媒作用に関する新規な法則を提案した。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)