量子コヒーレンス制御とその量子情報分野への応用
【研究分野】原子・分子・量子エレクトロニクス・プラズマ
【研究キーワード】
量子コヒーレンス / エンタングルメント / マスター方程式 / 量子コンピュータ / 量子ドット / ジョセフソン接合 / アンチ・バンチング
【研究成果の概要】
本研究課題の目的は,量子情報分野への寄与を念頭に,量子コヒーレンスの理解とその制御に関する新たな手法の確立にある.本年度は以下の研究成果を得て,学術誌や国際・国内学会で発表した.
1)量子コヒーレンスの緩和過程を記述するマスター方程式の導出には,通常,対象系と環境系との間に相関のない特殊な初期状態が仮定される.我々は,この仮定を課さない導出法を提示した.この議論は,射影演算子法の再吟味を促すとともに,不可逆性の起源に対する理解ももたらす.
2)マスター方程式は密度演算子に対する方程式であるが,表示を取ってc数の方程式に焼き直して解くのが通常の解法である.これに対し,我々は,演算子形式のまま解く方法を提案した.
3)二つの量子ビットに別の粒子を入射し,散乱することで前者間にエンタングルメントを生成する枠組みを議論した.特に,共鳴散乱が高いエンタングルメントの生成に役立つことを明らかにした.
4)量子コンピュータの実現を目指す系の一つとして,量子ドット系を実験家と連携して検討している.我々が念頭に置いている系では,量子ドット列の端のドット内の量子ビットしか直接測定することができない.それでもなお,量子ドット系全体のダイナミクスと測定が量子系に及ぼす効果を利用することで,量子ビット系全体の状態を読み取れることを示した.
5)量子コンピュータの実現を目指す系として注目されているジョセブソン接合量子ビット系を題材に,多量子ビット系のエンタングルメントを生成する方法を提案した.
6)アンチ・バンチングを題材に,多粒子系の量子統計に起因する量子コヒーレンス,特にそのコヒーレンス長を詳細に議論した.
【研究代表者】
【研究種目】若手研究(B)
【研究期間】2006 - 2008
【配分額】1,300千円 (直接経費: 1,300千円)