音響放射圧による超流動液体中のヘリウム結晶の移動と制御
【研究分野】物性Ⅱ
【研究キーワード】
量子固体 / 量子液体 / 超流動 / 超音波 / 音響放射圧 / 結晶成長 / 結晶核生成 / 負結晶 / 非線形音響学
【研究成果の概要】
我々は超音波を用いるとヘリウム4結晶を自由に成長、融解、核生成できることを発見した。これは音響放射圧によるものと考えている。超音波パルスによって生成する準安定状態の超流動ヘリウム4中の結晶核生成を系統的に調べた。2msecの超音波の存在下で到達できた準安定液体の臨界過加圧量の温度依存性は、低温おいては超音波強度が増すにつれて過加圧量が減少するが、高温では超音波の影響が見られなくなった。この温度依存性は我々がこれまでに調べたバルクの結晶表面への音響放射圧の効果と矛盾しないものである。また熱の影響を調べるために熱パルスによる核生成実験もあわせて行った。
また音響放射圧を利用して、結晶中に制御して負結晶を生成できることを見出した。その負結晶の移動様式と形態を系統的に調べた。ラフニング転移より高温のbcc固体では負結晶の形は球形であった。その運動は重力で真上に上昇していくものであり、その形態にも運動にも全く異方性は無かった。hcp固体ではラフニング転移に以下において形態が一変し、上面にはc-ファセットが現われ下面は滑らかな曲面になった。負結晶の移動に伴って上面が融解し下面が結晶化するわけであるが、上面では移動速度の遅いファセット面が広がり下面では移動速度の速いラフ面が広がったと考えれば説明がつく。言わば結晶の成長形と融解系を半分ずつくっ付けたようなものであり、負結晶の運動様式と深く結びついた形態である。また負結晶は真上には上昇せず、このファセットに平行な斜め上方に移動して行った。ファセット面は非常に易動度が小さいので、負結晶の形態と運動は異方的なものとなった。また0.9K以下で上昇速度が減少した。これはa-ファセットが側面に出現したためであると考えている。温度を下げるにしたがって負結晶の形態と運動が逐次的に異方性を増していく様子が観測できた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
奥田 雄一 | 東京工業大学 | 大学院・理工学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
|
【研究種目】萌芽研究
【研究期間】2003 - 2004
【配分額】3,200千円 (直接経費: 3,200千円)