パイロクロア酸化物を舞台とする5d多極子の遍歴-局在現象の解明
【研究キーワード】
スピン軌道結合金属 / スピン結合軌道金属 / 多極子秩序 / パイロクロア酸化物 / 空間反転対称性 / 超伝導
【研究成果の概要】
Cd2Re2O7はスピン軌道結合金属の候補であり、スピン軌道相互作用に由来するフェルミ液体不安定性から空間反転対称性を破る相転移が現れ、2つの低温相はスピン分裂したフェルミ面を有する遍歴奇パリティ多極子秩序状態にあると考えられている。本研究では(001)表面をもつ良質な単結晶を育成し、異方的応力印加による正方晶ドメイン制御に成功した。シングルドメイン結晶を用いた電気抵抗測定から、25%もの大きな異方性がTs2 = 120 Kにおいて反転することが分かった。その原因はスピン分裂フェルミ面におけるスピン依存散乱にあり、2種類の奇パリティ多極子相と相転移の起源を理解する上で重要な情報を与える。
【研究の社会的意義】
金属状態を特徴付けるフェルミ面はさまざまなフェルミ液体不安定性を有し、電子系の相転移を誘起する。例えば、電子格子相互作用があれば、フェルミ面に超伝導ギャップが開いて超伝導状態となり、磁気的な不安定性は磁気秩序をもたらす。スピン軌道結合金属ではスピン軌道相互作用に基づく新規なフェルミ液体不安定性が奇パリティ多極子秩序を誘起すると予想されているが、その実験的検証は不十分である。本研究はCd2Re2O7がモデル物質であることを示し、スピン軌道結合金属が物性物理学の教科書に追記されるべき新たな概念であることを示した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2018-04-01 - 2021-03-31
【配分額】17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)