繰り返しパルス磁場を用いた超高精度テラヘルツESRシステムの開発
【研究分野】固体物性Ⅱ(磁性・金属・低温)
【研究キーワード】
超強磁場 / 極限環境 / ESR / テラヘルツ波 / パルス磁場 / 繰り返しパルス磁場 / 強磁場 / テラヘルツ / ナノ磁性体 / サブミリ波
【研究成果の概要】
本研究では、30テスラの超強磁場を2秒の繰り返しで発生できる繰り返しパルス磁場装置をテラヘルツESR装置と組み合わせて、信号の積算を行う事により飛躍的なS/N比(信号/ノイズ比率)の改善を達成した。これまで市販のESR装置が100GHz程度までに留まっていたのに対して、本装置では3THzを越える周波数範囲で超高精度の測定を可能にした。従来の単発型パルス磁場ESR装置に比べて単位測定時間あたりのS/N比の改善は50倍以上となり、極微少な信号の検出が可能になった。また定常磁場を用いた高感度装置に対しても遜色のない精度を達成した上に、単位時間に測定できるスペクトル数で定義する測定効率は格段に向上した。磁場分解能に関しては、時間スペクトル積算法において20テスラ領域で約10ガウス、ソフトウエアを用いたピークピッキング積算法により約1ガウスの分解能を達成することに成功した。この装置の応用実験として、梯子物質における極微弱な禁制遷移を2THz以上の高周波で測定することに成功した。また、ナノ分子クラスターの微少単結晶を用いて複雑なESR吸収モードを測定し、そのスピンハミルトニアンのパラメーターを精密に測定することに成功した。今回の開発研究の結果、テラヘルツ領域でのESRを物理だけでなく、生物、化学、医学、材料科学などの研究においても用いる道が開かれた。今後の発展として、繰り返しパルス磁場を用いた分光、ラマン散乱、磁化測定、放射光X線散乱などへの応用も期待される。
【研究代表者】