強相関電子系における量子相転移
【研究分野】固体物性Ⅱ(磁性・金属・低温)
【研究キーワード】
量子相転移 / 強相関電子系 / 磁性 / スピンギャップ / ランダムスピン系 / 近藤格子 / 異方的超伝導 / 非磁性不純物
【研究成果の概要】
平成11年度及び12年度に行なった研究を以下に列挙する。
(1)Shastry-Sutherlandスピン模型の厳密な基底状態と励起スペクトルを解析し、磁化曲線にあらわれるプラトーの存在を明らかにした。さらに、このスピン模型において可能ないろいろな相の間の量子相転移を研究した。これらの理論解析結果は、二次元のスピンギャップ系SrCU_2(BO_3)_2に応用できる。
(2)2次元のプラケットRVB系における量子相転移が不純物効果によって消滅することがあることを、stochastic series展開の手法により明らかにした。
(3)ダイマー状態や、プラケットRVB状態、混合スピン構造などをもったスピン系における量子相転移を研究した。valence-bond solid状態と種々の磁気秩序状態の間の量子相転移の起こる条件をいろいろな場合に対して調べた。
(4)スピンと軌道の自由度についてSU(4)対称性をもった一次元のKugel-Khomskii模型を、数値的及び対称性の観点から解析的に研究した。さらに、CaをドープしたSr_2RuO_4における多軌道効果を、軌道に依存したMott転移で重要となるスピンと軌道の自由度に着目して解析した。
(5)幾何学的にフラストレートしたパイロクロア格子上の量子スピン系を、スピン1/2とスピン1の場合に研究した。ヤーンテラー的な格子歪み転移も含めて、大きな残留エントロピーを解放するために生じる量子相転移について考察した。
(6)伝導キャリアをドープした近藤格子模型のLuttinger流体としての特性を調べ、低エネルギーに特徴的なエネルギースケールが生じることを明らかにした。
(7)スピン三重項超伝導体Sr_2RuO_4に対して、磁気相関と異方的超伝導秩序との間の関係を考察した。
(8)非対角な乱れをもつ量子細線あるいは梯子模型について、低エネルギーでの状態密度とアンダーソン局在効果を調べた。
【研究代表者】
SIGRIST Manfred (SIGRIST Manfred W.) 京都大学 基礎物理学研究所 教授
(Kakenデータベース)