ディラック電子系における逆ファラデー効果によるスピン流発生
【研究キーワード】
スピントロニクス / ディラック半金属 / 逆ファラデー効果
【研究成果の概要】
本研究ではBiで観測された円偏光起電力について、円偏光によって電子スピンが影響を受ける逆ファラデー効果に着目し、その起源を解明することを目的に研究を行った。まず、これまでも観測されてきたBiについて強磁場を印加しながら円偏光起電流を観測できる測定系を構築し、磁場、温度依存性について調査を行った。結果としては円偏光起電力の磁場依存性には7Tまでの領域については大きな変化が見られなかった。この結果を、逆ファラデー効果と逆スピンホール効果による電流生成のメカニズムを念頭に解釈した場合には、Biのスピン緩和時間が相当に短いということであり、スピン散乱機構がある程度限定される。一方で温度依存性からは低温で起電力が抑制される傾向が見出された。これに関しては逆スピンホール効果と逆ファラデー効果の温度依存性が、それぞれ、あるいは一方で現れている可能性があり、現在も調査中である。また、Biに対して不純物を添加することで電子構造に小さい変化を加える実験を、薄膜製造方法を変えて行った。この結果からは以前の別の製法によるBiの結果と同様に純粋Biのフェルミ面近傍において特異的に大きな効果が表れていることが示唆されており、試料製造方法に依らないより物質の内的な効果であることが支持されている。ただし、不純物の添加量が大きい領域については試料製法によってやや異なる振る舞いが見られるため、構造解析等も行いつつ慎重に調査を進めている。また、これとは別にディラック電子系の代表的物質であるグラフェンにBiを添加することで円偏光起電力とディラック電子系の関係を調べる実験も行い始めている。こちらについては今のところ大きな効果は観測されていないが、グラフェンの電子散乱の少なさが影響している可能性がある。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2021-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)