リラクサー強誘電体の基礎機能発現の起因
【研究分野】固体物性Ⅰ(光物性・半導体・誘電体)
【研究キーワード】
リラクサー / 強誘電体 / Pb(Mg1 / 3Nb2 / 3)O_3 / 長距離秩序 / 時間発展型GL方程式 / 相転移 / 中性子散乱 / 複屈折 / 誘電緩和 / 光散乱 / ヘテロ構造ゆらぎ / リラクサ-
【研究成果の概要】
リラクサーは巨大でブロードな誘電率のピークを室温付近で示すにもかかわらず,極低温まで長距離秩序が発達しない特異な強誘電体である。前年度までに,電場を極性軸方向に加えた場合には,長距離秩序すなわち自発分極が発達すること,しかしゼロ電場のもとでの温度下降(ZFC),電場のもとでの温度上昇(FH),電場のもとでの温度下降(FC),そのあとのゼロ電場での温度上昇(ZFCaFH)では全く異なる経路を辿ることを,複屈折の測定から見出した。このような現象は,低温での電場が準安定状態にあり,長い緩和時間で長距離秩序が発達することを予想させる。今年度は,低温で温度を固定し,電場を印加したときに発達する長距離秩序の時間変化を,光学的な手段で測定観察した。この結果,次のことを明らかにした。
(1)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3(PMN)の場合,長距離秩序は極端に長い待ち時間の後に,急激に発達する。この待ち時間は,電場と温度に依存し,分極消失温度から低温側になればなるほど大きくなる。時には数日に達する。電場が大きくなると,逆に短くなる。
(2)PMNにPbTiO3を3%固溶させた系においては,PMNと同様な超長緩和現象が観測されるが,この場合には長距離秩序は2段階で発達する。これはリラクサー中の極性ナノ領域がマクロな領域に発達し,次にそれがさらに大きな分域を形成する過程と考えられる。
(3)中性子散漫散乱から特徴的なパターンが観察され,これを極性ナノ領域のまわりの歪み場によるものとして時間発展型Ginzburg-Landaurironn理論を用いて説明した。このモデルでは,リラクサーにおける長距離秩序は,この歪み場の競合によって阻止させる。このような立場から,電場のもとでの長距離秩序の発達の定量的解析を現在行っている。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
山田 安定 | 早稲田大学 | 理工学総合研究センター | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1997 - 1999
【配分額】12,700千円 (直接経費: 12,700千円)