原子気体ボース・アインシュタイン凝縮体におけるトポロジカル量子現象
【研究キーワード】
冷却原子気体 / トポロジカル相 / トポロジカル構造 / 非エルミート / ボース・アインシュタイン凝縮 / スピン軌道結合 / スケーリング則 / カイラルエッジモード / 成長則
【研究成果の概要】
以下の3つの研究を行った。
①ボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)の南部-ゴールドストーン(NG)モードは、ゼロエネルギー極限において透過確率1でポテンシャル障壁を透過するという、異常トンネリング現象を示す。この現象を一般化し、動的不安定なBECにおいてもNGモードは異常トンネリング現象を示すを発見した。ただし、完全透過を示すモードは、純虚数エネルギーを持つモードであるため、虚軸に沿ってゼロエネルギー極限をとる必要がある。また、エネルギーの虚部が最大となる点で、動的不安定なモードの完全な反射が存在することを見出した。非エルミートハミルトニアンの関与する伝搬では例外点の出現に伴い完全反射が起こることがあるが、今回は、例外点由来ではなく、入射波と反射波の干渉により準粒子波動関数の振幅が強く抑制されていた。
②スピン・軌道結合したBECにおけるストライプ相は超固体の一種である。実験的に到達可能なパラメータを利用し、スピン・軌道角運動量結合(SOAMC)BECにおいて、大きな縞間隔と高い縞コントラストを持つ環状の縞構造が実現できることを示した。変分法的解析法を開発し、これまでの解析法にはない本質的な相互作用を一次までとらえることに成功した。この結果は、SOAMC BECにおけるストライプ相を実験的に直接観測する可能性を開くものである。
③Family-Vicsek スケーリングは、古典系の表面粗さ成長において現れる最も重要なスケール不変の法則の一つである。本研究では、表面積演算子を導入することで、強相互作用する量子ボソン系においてもFamily-Vicsekスケーリングの出現することを理論的に明らかにした。この演算子は局所的な粒子数演算子の同時刻での和で構成されるため、量子多体系における表面粗さの観測とそのスケーリング挙動は、現在の超低温原子の実験からアクセス可能である。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
小林 伸吾 | 国立研究開発法人理化学研究所 | 創発物性科学研究センター | 研究員 | (Kakenデータベース) |
藤本 和也 | 東京工業大学 | 理学院 | 助教 | (Kakenデータベース) |
|
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】15,210千円 (直接経費: 11,700千円、間接経費: 3,510千円)