SドープしたFeSeの高温超伝導機構と量子相転移の高圧下NMRによる研究
【研究キーワード】
鉄系超伝導体 / 強相関電子系 / 核磁気共鳴 / 高圧下測定 / 量子相転移 / 量子臨界現象 / 高温超伝導 / 鉄系超伝導
【研究成果の概要】
FeSeは、ネマチック秩序、超伝導、および磁性が圧力・温度(P-T)相図で互いに絡み合っている特異な系である。しかし、12%S-置換したFeSeでは、ネマチック秩序と磁性の重なりが解消されている。そこで、本研究では 約5 GPaまでの圧力下でSe核の磁気共鳴測定を実行した。その結果、約1万気圧において圧力誘起リフシッツ転移が、状態密度の異常として、また異なる反強磁性(AF)揺らぎを伴う超伝導(SC)ダブルドームとして、観察できた。 高い超伝導転移点(Tc)をもつ高圧側ドームでは、従来の予想に反して、AF揺らぎが弱く、dxy軌道とその軌道内結合が高いTcに重要な役割を果たすことが分かった。
【研究の社会的意義】
鉄セレン系超伝導体は、高い超伝導転移点(Tc)をもつ鉄系超伝導体の一つであるが、Tcの起源は解明されたとは言えない。一つには、超伝導、結晶対称性の破れたネマティック秩序、磁性が複雑に関係しているためである。高いTcが4万気圧以上で実現することも問題を難しくしている。本研究では、高圧下でミクロな電子状態を調べるために、キュービックアンビル圧力セルを用いた核磁気共鳴法を開発した。この結果、ネマティック秩序と磁気揺らぎに相関があること、高いTcはネマティック秩序が消滅し、極めて弱い磁気揺らぎ下で実現することが分かった。これは、高温超伝導機構が複数の要因で決まることを示し、起源の多様性を示唆している。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
上床 美也 | 東京大学 | 物性研究所 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2018-04-01 - 2021-03-31
【配分額】17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)