超高速電子線回折法を利用した非平衡物質科学の開拓
【研究分野】物性Ⅰ
【研究キーワード】
光誘起相転移 / 光誘起協同現象 / 隠れた秩序 / 電子線回折 / 非平衡状態 / 超高速ダイナミクス / 隠れた秩序状態
【研究成果の概要】
協同相互作用が働く固体物質内での構造変化の知見が光マルチフェロイック・スピンスイッチ等の高速光相スイッチ材料や光エネルギー変換材料開発に必要不可欠である。本研究では、研究代表者らが培ってきた動的電子線回折と振動分光観測技術を駆使し、光励起状態特有の(基底状態では隠れた)構造秩序が有機結晶での光誘起相転移において果たす役割を実証し、非平衡状態にある物質の機能と隠れた秩序との関連解明を目的としている。
この目的達成のために2017年度は、ペロブスカイト構造を持ったCo酸化物(無機)強相関誘電体における強誘電性超高速光制御に挑戦した。この結果、THz域の応答速度を持った強誘電性の増強化効果を世界で初めて発見し、報告することができた(Phys. Rev.Applied 7 (2017) 064016)。得られた実験結果は、THz光と強誘電物質の電子状態がコヒーレントに結合し一体化した、ドレスド状態の出現を強く示唆するものである。本研究開始時の期待をはるかに上回る、想定外の成果であり光科学、誘電体材料科学に幅広い影響を及ぼすものとなった。
さらに二重ペロブスカイト構造を持つCo酸化物無機材料においても、研究計画前倒しによるレーザー光源安定化を活かして、微弱ゆえに観測困難とされて来た遷移金属酸化物の超高速構造変化、とりわけ酸素原子など軽元素の動きを捉える実験に成功し、光誘起イオン移動制御が実現できることを証明した。現在、高速分光データとの比較による、酸素原子移動メカニズムの解明に取り組んでいる。
加えて、今年度購入した分光システムを活用して、電荷-スピン‐構造が強く結合した磁性を伴う中性イオン性相転移物質を開発した。この物質では、光で誘電・磁気複合物性の制御が実現できる可能性があり、今後、光誘起超高速分光、動的構造両面での集中的な研究を予定している。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
中村 一隆 | 東京工業大学 | 科学技術創成研究院 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
羽田 真毅 | 岡山大学 | 自然科学研究科 | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】2015-04-01 - 2020-03-31
【配分額】34,060千円 (直接経費: 26,200千円、間接経費: 7,860千円)