学習の生物学的基盤に関する総合的研究
【研究分野】動物生理・代謝
【研究キーワード】
記憶・学習 / 本能 / 生物学的基盤 / 動物 / 脳 / 行動 / 多様性 / 普遍性
【研究成果の概要】
本基盤研究(C)(1)企画調査では「動物の学習の生物学的理解」を中心課題に設定して、動物種による違いを生みだした進化の過程を再構築しながら、なおその中で保存されている共通性と普遍性を発見することを目的とした。そのために、動物行動学・行動生理学・認知心理学・神経科学の広い分野にわたって関連する研究者が最新の成果を持ち寄り二つのシンポジウム(神経科学会大会と動物学会大会)を実施すると共に研究会を開催して研究者間の緊密なネットワークを形成した。これらの一連の活動は動物学の新しい側面を拓く活動である。
(1)第23回日本神経科学会大会シンポジウム「学習する本能」
平成12年9月5日、横浜市「横浜みなとみらい21・パシフィコ横浜」にて、シンポジウムを開催した。
サケの母川回帰と嗅覚記憶形成:佐藤真彦(横浜市立大学・大学院総合理学研究科)
雛鳥の視覚性刷込みによる遺伝子発現の増大:木村尚博(創価大学・工学部)
小脳の新しい機能:プルキンエ細胞とニューロステロイド:筒井和義(広島大学・総合科学部)
鳥の歌文法の神経基盤:岡ノ谷一夫(千葉大学・文学部、科学技術振興事業団さきがけ研究21)
The Neural Basis of Vocal Learning in Songbirds:A.J.Doupe(University of California,San Francisco)
総合討論「学習する本能」松本元、松島俊也、佐藤真彦、木村尚博、筒井和義、岡ノ谷一夫、Allison J.Doupe
本シンポジウムを実施することにより、学習の生物学的基盤に関する最新の知見を得ることができた。様々な研究対象における記憶研究の重要性とその展開を強く印象付けるものであった。神経科学の新しい側面を拓くものとして高く評価された。
(2)第71回日本動物学会大会シンポジウム「学習の生物学的基盤に関する総合的研究」
平成12年9月21日(木)午後3時から6時まで、東京都目黒区「東京大学駒場キャンパス」にて、日本動物学会第71回大会の[国際ブレインサイエンスシンポジウム」として開催した。
トリの歌学習システム:H.-J.Bischof(University of Bielefeld,Germany)
指定討論者:岡ノ谷一夫(千葉大・文学部)、竹内浩昭(静岡大・理学部)
サケの母川回帰と嗅覚記憶システム:Thomas Quinn(University of Washington,USA)
指定討論者上田宏(北海道大・水産学部)、松島俊也(名古屋大・大学院生命農学研究科)
記憶学習の研究がつねに動物の進化的背景と行動生態学的背景を見失ってはならないこと、様々な研究手段を糾合し様々な現象を広く深く俯瞰する研究戦略が、今後の学習研究の主流となる事を強く印象付けるものとなった。翌日開催された大会本部企画シンポジウム「20紀の動物学と21世紀の展望」においても、講演者の一人(日高敏隆、滋賀県立大学学長)により動物学の新しい側面を拓くものとして高く評価された。
(3)「学習の生物学的基盤に関する総合研究」研究会
平成12年9月24日25日に、水産庁養殖研究所日光支所において、本企画調査メンバーと「微小脳システムの適応的設計:学習・認知およびホルモンによる行動変容研究会」(文部省科学研究費特的領域研究「微小脳システムの適応的設計」代表:高畑雅一)の協力を得て、水産庁養殖研究所日光支所(栃木県日光市)において合同研究会を実施し、研究者間の緊密なネットワークを形成した。
【研究代表者】