メゾスコピック系とトンネル素子を用いたスピングラス研究手法
【研究分野】数理物理・物性基礎
【研究キーワード】
スピングラス / メゾスコピック / エイジング現象 / ドロップレット描像 / 磁場相関長 / スーパースピングラス / 異常ホール効果 / トンネル素子 / エイジング / 微細加工 / トンネル磁気抵抗 / 無磁場中測定 / ドロップレット
【研究成果の概要】
スピングラスが示すスローダイナミクスに生じるエイジング現象は、低温相でのスピングラスの振舞を解明する手がかりとなる。この現象は、ドロップレット理論により、スピンが作るドメインの熱活性化プロセスに基づいて説明されている。このドメインのサイズに関して、これまで直接的な知見が得られていない。本研究では、空間サイズをメゾスコピックなサイズに制限することで、ドメインサイズなどのエイジングと関連する空間サイズを直接的に評価することを目的とする。
高さ200nm、径100〜200nmの柱状パターンが形成された石英基板上に厚さ100nmのスピングラスAgMnを堆積させた。パターンを持つ試料と通常の薄膜試料で磁化率の温度依存性を比較すると、磁化率がピークを示す温度は、パターンを持つ試料の方で低温に現れ、さらにより小さなパターンを持つ試料においてピークは低温側にシフトした。また、磁化の緩和を測定すると、パターンサイズが小さな試料では飽和が認められたが、通常の薄膜試料では飽和は見られなかった。これはサイズが有限である場合には、有限時間内に系が平衡状態に達することを意味する。一方、磁場中で磁場中冷却磁化と零磁場冷却磁化が一致する温度を調べた結果、1000e以上でパターンがある試料と通常の薄膜試料との間に差がみられなくなった。これは、1000e以上では磁場相関長がパターン試料のサイズより小さくなるために、両者の差が見られなくなったものと解釈され、磁場中ではスピングラス秩序は磁場相関長以上のサイズで不安定であることを示唆する結果である。
また、サイズに依存するエイジング現象をより高感度で検出するために、粒子問距離を制御した強磁性微粒子集合体を用いたスーパースピングラスを作製し、さらに異常ホール効果を用いて、微細な単一領域でのスピングラス挙動を観測する手法を開発した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
牧 英之 | 慶應義塾大学 | 理工学部 | 助教 | (Kakenデータベース) |
|
【研究種目】萌芽研究
【研究期間】2006 - 2007
【配分額】3,300千円 (直接経費: 3,300千円)