逆問題の解の再構成手法の確立
【研究分野】数学一般(含確率論・統計数学)
【研究キーワード】
逆問題 / 非適切問題 / 逆解析 / 再構成手法 / 数値解析 / 多倍長数値計算 / Tikhonov正則化法
【研究成果の概要】
物理・工学・医学などの応用分野においてはCT(断層撮影法)など種々の逆問題が技術として利用されており、その成果は我々の生活を支えている。しかしこれらの逆問題は数学的にはHadamardの意味で非適切であり、通常の単純離散化による手法での解の再構成、特に数値的再構成は殆んど不可能である。このため、Tikhonov正則化法を始めとする幾つかの正則化法(緩和的手法)や、問題固有の情報(先見情報)を援用した解析手法が提案されている。しかしこれらの先見情報の利用は問題個別の議論が殆んどであり、その正当性などの数学解析は殆んどの場合は未だ示されていない。また同種の手法を分野固有の述語による記述をするため、分野を越えての共通理解が滞り、此れが研究推進を阻害している場合も見受けられる。この様な状況を鑑み、分野横断的な逆問題解析の研究を我が国において行う可能性を調査することが本研究の目的である。今回の調査研究では、逆問題の分野で医学・工学・物理・数学において我が国をリードする研究者を分担者として組織して調査を行い、主として分担者による個別調査によるかたちで調査を行い、メールを通しての相互意見交換によって今後の研究の進め方を議論した。
この結果、現在は複数の分野にわかれて独立して研究している研究者が「逆問題」「非適切問題」をキーワードに研究交流・共同研究を行うことが重要であるという共通認識が持たれ、さらには京都大学を中心に現在進行している多倍長数値計算環境の援用を医学・工学の応用逆問題の解の再構成に適用することの意義が指摘された。また分担者の何人かがロシア・香港での逆問題・非適切問題の国際研究集会に参加し、海外での応用逆問題の研究動向を調査し、海外においても応用逆問題の解の再構成-特に数値解析に対する関心が高いことを実感した。
この調査研究の結果をふまえ、平成14年度には特定領域の新設に向けての申請準備を行うことが妥当であるという結論に達し、平成13年度末には既に準備を開始している。
【研究代表者】