スピングラスの確立論的研究
【研究分野】数学一般(含確率論・統計数学)
【研究キーワード】
スピングラス / 無限粒子系 / パーコレーション / 相転移 / イジング・モデル / wetting transition / 確立モデル / 定常分布 / 確率モデル
【研究成果の概要】
本年度もセミナーや研究会を通じて、スピン系等の数理モデルの性質を中心に最新のプレプリントの紹介、各自の研究の報告・議論を行ったが、スピングラスのモデル自体について大きな進展を得ることは残念ながら出来なかった。以下では、セミナー等で得られた、このテーマに関連した問題に関する実績概要を述べる。
1.吉田は、wetting tansitionの問題に興味を持ち、E.BolthausenやP.Caputoらのプレプリントを読むとともに具体的な計算を行った。Wetting transitionの問題とは、固形物の上に液体がありpinningとentropy repulsionという対立する力がかかるとき、そのinterfaceの局在(dry phase)・非局在(wet phase)がどのようなときに起こるかという問題である。吉田は、非負に条件付けられた一次元のランダムウォークにpinningとしてdiluted local timeを与えたとき、pinningの係数が小さければ非局在、大きければ局在が起こることを示した。
2.熊谷は、フラクタルのような複雑な形の不純物が空間内に存在するときに、空間からこの物質内への熱伝導はどのようになるかという問題を扱い、実解析で用いられるBesov空間の理論を援用することによりある条件のもとでこのような熱伝導を表す拡散過程(物質内ではその物質の拡散をし、外では空間の拡散に従うようなもの)が構成できることを示した。この結果は、最近雑誌に掲載された。
3.村井は篠田氏(奈良女)との議論を通じて、ある範疇の自己相似なグラフ上ではρ-パーコレーションのρ→1における相転移点と普通のパーコレーションの相転移点が一致することを示し、現在論文を執筆中である。
【研究代表者】