非線型放物型偏微分方程式の解における空間的構造の自律的形成
【研究分野】大域解析学
【研究キーワード】
反応拡散方程式系 / パターン形成 / パターンの崩壊 / 解の爆発 / 活性因子,抑制因子 / スポット解の散乱現象 / スパイク解 / 活性因子・抑制因子 / 非常に薄い領域 / 反応拡散系 / 集中現象 / 特異摂動 / 軌道の極限集合 / 半線型楕円型偏微分方程式 / 領域の境界の曲率 / 安定性 / 界面 / 空間的構造
【研究成果の概要】
本研究課題は非線型放物型偏微分方程式の解の挙動の追跡を目指して推進されてきた.
研究代表者はWei-Ming Ni(ミネソタ大学)と鈴木香奈子と共同で,ギーラーとマインハルトによる活性因子-抑制因子型反応拡散系の解の挙動について研究し,次のことを解明した:(i)初期値が定数函数の場合,活性因子がそれ自身を生産する強さが抑制因子の生産を促す強さよりも大きいと,有限時間で爆発する解が存在する.爆発解には,活性因子だけが発散するものと抑制因子も同時に発散するものとがあり,前者は初期値を抑制因子が指定された値に収束するように選ぶことができる.(ii)活性因子の方程式が源泉項を含まない場合,活性因子がそれ自身よりも抑制因子の方を多く生産するならば,どの解も爆発することはない.また,パターンの崩壊,つまり解が原点に収束することが起こり得る.
西浦は,パルス解やスポット解の散乱現象を考察し,分水嶺解と呼ばれる,不安定な定常解または周期解の近傍での局所ダイナミクスと,解軌道の空間的な位置関係により,様々な入出力関係が形成されることを明らかにした.
柳田は,ある準線型放物型方程式に対し,初期値に応じて大域的増大解,進行波解,有限時間消滅解のいずれかに分類されることを示し,その漸近挙動や消滅時刻における解の振る舞いについて調べた.
小薗は,3次元非有界領域において,すべての平方可積分な初期値に対し強エネルギー不等式を満たすナビエ・ストークス方程式の弱解を構成できることを証明した.
反応拡散系の考えを初めて提唱したチューリングの論文が出版されて50年となるのを記念し,パターン形成レクチャーシリーズとして関連分野の講義を実施した.最終年度には研究成果の発表と討論のため国際研究集会「非線型放物型偏微分方程式における空間的構造の自律的形成」を開催した.
【研究代表者】