無限次元確率モデルの数学解析
【研究分野】数学一般(含確率論・統計数学)
【研究キーワード】
無限次元拡散モデル / フレミング・ヴィオ過程 / 集団遺伝学モデル / 自然選択 / 時間的可逆性 / 確率偏微分方程式 / ランダム環境下のランダムウォーク / ランダム高分子モデル / 可逆定常分布 / 分数冪モーメント / ランダムポリマーモデル / ランダムウォーク / マルチンゲール / 相互作用のある拡散系 / 標本リアプノフ指数 / ブラウン運動
【研究成果の概要】
1. 集団遺伝学において重要な拡散過程モデルである「フレミング・ヴィオ過程」に対して意味のある2つの結果を得た.まず遺伝的要因として突然変異だけでなく自然選択のあるモデルを取り上げ,さらに自然選択の項が非有界な場合を考察した.このモデルに対しては拡散過程としての定義可能性(特に、一意性)さえ未解決の問題であったが、無限次元拡散過程として一意的に構成する問題、定常分布の一意性などはイーシア教授(ユタ大学)との共同研究で証明した。さらに離散的マルコフモデルからの拡散近似や定常分布の一意性の問題も解決した.強い意味でのエルゴード性も成立すると予想されるがこれは未解決である.
さらに自然選択も含めたモデルに対し,時間的可逆分布が存在するクラスの完全な特徴づけをDirichlet spaceの理論を応用することにより与えた.この結果は遺伝子系図のの考察に際して重要な意味をもつ.(志賀)
2. 時空的に変動するランダムな環境におけるランダム・ウオーカーの生存確率の問題に対しては、ボアソン的ノイズをもつ線形確率偏微分方程式との双対的関係を用いて、径数に関する漸近解析を展開し、その結果は古尾谷との共同論文として発表した。さらに「Directed polymer model」の問題は上記の生存確率の問題と数学的内容を共有しており,この立場から高分子モデルの中心極限定理の成否の状況を空間次元とのからみで詳しく調べた。また低次元「Directed polymer model」に対し,分配関数の漸近挙動に関する結果を得た.(志賀)
3. 相互作用のある多粒子の古典力学系に対し、適当なスケール極限をとることにより経験分布は極限分布し収束し、極限分布の密度関数は非線形拡散方程式の解になるという流体力学極限の問題を解決した。(内山)
4. cofinite Fuchsian groupsにおける力学系に対し、それをMarkov systemsとみたときのtransfer operatorsの摂動解析を展開し、数論に関連するエルゴード論の問題を解決した。(盛田)
5. 数理ファイナンスの理論に動機づけられて,連続局所martingaleが一様可積分になるための必要十分条件を与えた.(高岡)
【研究代表者】