確率論の総合的研究
【研究分野】数学一般(含確率論・統計数学)
【研究キーワード】
流体力学極限 / Wiener汎関数 / Dirichlet形式 / 大偏差原理とエントロピー / フラクタル / スペクトルの漸近挙動 / ブラウン運動と酔歩 / 雑音の同型問題 / エントロピー / 大偏差原理 / 確率過程 / 確率解析 / 漸近挙動 / エルゴード性 / スペクトル / データ圧縮
【研究成果の概要】
本研究では3年間に渡り,確率解析、流体力学極限、エルゴード理論など確率論の諸分野の研究を推進し、順調な研究成果を挙げると共に、2,3の新しい動向へも寄与した。
確率解析においては、会田、重川を中心とした対数ソボレフ不等式など、無限次元空間上の関数空間における不等式の役割の認識の深化、および、谷口、松本を中心とした指数型汎関数に対する漸近挙動の研究の進展がとくに顕著であった。また、長田の仕事など、ディリクレ形式の理論に基づく確率解析の一般化という方向性も見逃せない動向である。
流体力学極限は、舟木、内山らを中心として、より現実的な方程式の解明というより困難な状況下で着実な成果を挙げると共に、その中から上記ディリクレ形式論における結果との対比という問題意識が鮮明になり、今後の進展が期待される。
エルゴード理論関係では、盛田による相関関数の研究などの成果を得た。なお、平成9年度に企画した情報理論など周辺分野との勉強会は、韓氏による情報理論における大偏差原理の研究などの波及効果をもたらしている。
古典的な理論、手法の現代的な再生は当初掲げた目標のひとつであった。これに関しては、熊谷らのフラクタル集合上の解析、厚地のネヴァリンナ理論への確率論的接近、濱名の酔歩の汎関数の精密評価、白井らのグラフのスペクトルでの成果が顕著である。
また、長井たちは確率制御理論の手法を援用することにより数理ファイナンスに新しい視点をもたらし、杉田、高信らは確率論的手法を駆使して擬似乱数の理論に貢献している。
さらに最終年度、渡辺信三氏のご尽力により、黒色雑音など雑音の同型問題という、将来大きく発展する可能性の大きい新動向を照会する機会がもてたことは幸いであった。
最後に、外国旅費の制限緩和により、海外の研究者との共同研究が大変スムーズになり、研究の推進に大いに役立ったことを記しておきたい。
【研究代表者】