繰り込みを伴う方程式と確率解析
【研究キーワード】
特異確率偏微分方程式 / 確率微分方程式 / 確率量子場モデル / マリアヴァン解析 / ディリクレ形式 / 構成的場の理論 / 確率量子化 / マルコフ過程 / ラフパス理論 / 確率偏微分方程式
【研究成果の概要】
2021年度は主に、自己相互作用をもつポリマー測度の構成についての研究を行った。このモデルはΦ4量子場モデルと関係があることが知られていて、実際に同じような繰り込みを通じて確率量子場が構成できることが知られていた。このモデルの研究に取り組むことにしたのは、この類似性を用いて以前から行っているΦ4モデルの研究に役立てたいと考えたからである。このポリマー測度の研究は、この話題の専門家と共同で研究を進めていて、現在は3次元の場合のディリクレ形式の構成を目標にしている。これは数十年前にある数学者が亡くなったことにより中途半端な状況で止まっていた先行研究を完成させようというものである。最終的には最近盛んに行われている特異確率偏微分方程式によるアプローチを目指している。
ポリマー測度の研究とは別に、特異確率偏微分方程式における議論に対して、従来の確率解析で行われている議論との違いを明確にするという研究も行った。この研究では、性質の悪い具体的な確率微分方程式を例に挙げ、特異確率偏微分方程式における議論を適用できて良い確率微分方程式の列で近似ができるが、極限の確率過程がマルコフ性を持つが強マルコフ性を持たなかったり、時間局所解の一意性があり、全ての解が時間大域的に拡張可能であるが時間大域解の一意性が無いということが起こり得ることを示した。この話題についてはまだ不明確なことが多く、引き続き研究を行う予定である。
また、前研究課題における研究成果で2020年度に投稿していた論文に対して、査読結果のコメントに応じた修正及び拡張のための研究も行った。これらはΦ4モデルや指数的な相互作用を入れた確率量子場の確率量子化方程式に対する研究であり、投稿論文のうちの1つは学術誌への掲載が決まり、他の論文も掲載決定が期待できる段階に至った。
【研究代表者】