ジャンプを含む確率過程の複雑な観測データに対する統計解析と新しい学習理論への応用
【研究キーワード】
確率過程 / 統計推測 / 機械学習 / リスク予測 / モデル選択 / ジャンプ型拡散過程 / 最尤型推定量 / 漸近正規性 / 非同期観測モデル / 推定量の最適性
【研究成果の概要】
本年度の主な研究成果として以下が挙げられる。
1.ジャンプ型拡散過程モデルに対して推定量の最適性を議論するための局所漸近正規性を示すため、Jeganathan (Sankhya 1982)において研究されている局所漸近正規性が成立するための十分条件を発展させ、ジャンプ型拡散過程モデルを扱える手法へと拡張した。
この手法とShimizu and Yoshida (SISP 2006), Ogihara and Yoshida (SISP 2011)において研究されているジャンプ部分と連続部分を分離する技術をあわせて、ジャンプ型拡散過程モデルの局所漸近正規性を示した。この成果は論文にまとめ、投稿中である。
2.ジャンプ型拡散過程の非同期観測モデルに対する最尤型推定量の性質を調べるため、まずはエルゴード型拡散過程モデルの最尤型推定量の漸近正規性の結果を示した。このモデルに対しては推定量の最適性を示すための局所漸近正規性の結果が成立することも期待され,さらに推定量の最適な漸近分散がジャンプ型拡散過程モデルの場合と同じになると期待されることからこれを示すことを目指していく。また、シンプルなジャンプ拡散の非同期モデルにおいても最尤型推定量の漸近正規性を確認した。
3. 拡散過程モデルにおいて拡散係数が未知の場合に観測から近似してドリフト項のパラメータを推定する手法を開発した。この推定手法は拡散過程のドリフト構造だけわかっているようなモデルにおける推定を可能にする。
4. 保険分野への応用として、死亡率予測に関して拡散過程のhitting time distribution を活用した全く新しい予測モデルを開発した他、クレーム件数とクレームの間に長期記憶的な相関がある場合の極限モデルとして現れるフラクショナルブラウン運動で駆動される確率微分方程式の統計推測の成果を出した。
【研究代表者】