高次元代数多様体上の対数的標準因子の研究
【研究分野】代数学
【研究キーワード】
非消滅定理 / 代数多様体 / 極小多様体 / 半正値性定理 / 藤田予想 / 対数的標準因子 / 消滅定理 / フリップ / 極小モデル / 導来圏 / モジュライ / 特異点 / 層 / オービフォルド / 固定点自由化定理 / ホッジ構造 / 可逆層 / 標準因子 / KLT / 非消滅予想 / 線型系
【研究成果の概要】
まず,完備な正規代数多様体Xとその上の可逆層Lに対して,次のような効果的非消滅予想を考えた:「X上のR因子Bがあって,対(X.B)はKLTであるとし,Lはネフで,さらにL-(K+B)はネフかつ巨大であるとする.このとき,LはOではない正則大域切断を持つ.」そして,Lの数値的小平次元が2以下の場合や,Xが3次元の極小多様体や4次元のファノ多様体の場合に,これを証明した.証明の過程で,以前に証明した代数的ファイバー空間における半正値性定理を対数的な場合に拡張した.以前証明した対数的標準因子の関係式とあわせると,ファノ多様体の梯子の存在などに応用できる.
次に,藤田の自由性予想を一般次元で解決することを目指して,藤田予想の相対版を考えた.そして,相対化した藤田予想も絶対版の場合と同じように対数的標準因子の存在に関する局所的な予想から従うことを証明した.特に,底空間の次元が4以下ならば相対化した予想も正しいことが証明された.この結果を証明するために,ホッジ構造の変形を使って層F上に放物構造というものを定義し,それを使ってFに対するQ因子版の消滅定理の精密化を得た.
さらに,導来圏の理論と層のモジュライの理論を使った新しいアプローチによるフリップの存在問題の研究をした.まず,フリップの存在予想がフロップの存在予想に帰着されることを証明した.また,商特異点を持つ多様体の場合にはフロップによって通常の層の導来圏は必ずしも不変ではないことを示し,そしてそれに代わるものとして,オービフォルド層の導来圏というものを導入し,いくつかの例ではこれを考えればすべてうまくいくことを証明した.
【研究代表者】