国際研究集会「無限自由度量子系の解析学」開催のための企画調査
【研究分野】大域解析学
【研究キーワード】
数理物理 / 関数解析 / 作用素環 / 統計力学 / 場の量子論 / 無限自由度 / 非平衡 / 共形場理論
【研究成果の概要】
この企画研究では場の量子論、量子統計力学の数学的研究の研究状況を調査し、近い将来、日本国内で国際研究集会を開催する可能性を検討した。8月上旬に研究分担者および関連した分野の研究者と集中的に研究連絡を行った。2003年3月にマルセイユで行われるワークショップに1週間参加して情報収集を行う。科学的面から判断して、以下の研究会のテーマとして適当である。
(1)部分因子環理論を使った共形場理論の研究:この分野で近年顕著かつ独創性に富むな成果としては、Feng Xu(カルフォルニア大学)、河東泰之(東京大学)らの研究がある。Feng Xuは、Wess-Zumino-Witten模型から定まる部分因子環と、頂点代数理論を結び付け、組み合わせ的な問題を解析的手法で解決している。河東は、部分因子環の理と2次元共形場理論セクターの構造解析を進める方法論を作っている。ヨーロッパの局所場の量子論の研究者により、Feng Xu-河東の研究の発展的応用が期待される。
(2)量子系における非平衡定常状態の研究:90年代に非相対論的場の量子論のハミルトニアンのスペクトル解析が進み埋蔵固有値の問題などこれまで数学的には厳密に扱えなかった問題の研究が進みつつある。これと独立にD.Ruelleはある種の非平衡定常状態の研究を提案しているが、上記のスペクトル解析の成果を応用することで解決の可能性が出てきた。この方面の研究は日本とヨーロッパで独立して行われている。国際研究集会を日本で開催することで、より深いレベルの情報交換が行われると考えられる。
以上の状況をふまえ、この企画調査研究で想定した研究会を2-3年先をめどに行うのが妥当である。資金面や学術面で関連学会からの協力を得られるかどうかより実務的レベルの検討をこの1年をめやすに行いたいと結論した。
【研究代表者】