データ同化による火山噴火推移予測に関する理論的研究
【研究キーワード】
火山噴火 / 推移予測 / データ同化 / 逆解析理論 / 数値モデル
【研究成果の概要】
火山噴火の時間発展は複雑かつ多様であり,推移予測が難しい.火山学においては,この難題に対して,野外観測で火山現象をモニタリングすることによって予測精度の向上を図ってきた.その結果,地殻変動や火山噴煙の連続観測によって,噴火中のマグマ溜りの圧力やマグマ噴出率について時系列データを得ることができるようになってきた.一方で,火山噴火を支配する物理過程についても,近年,理論モデルの研究が進んできた.このような学術的背景の中,物理モデルと観測データに基づく「データ同化」による噴火推移予測の手法開発が必要となってきた.本研究では,データ同化による噴火推移予測の基礎理論の構築と数値コードの開発を行う.
2021年度には,当初の計画通り,火道と弾性変形するマグマ溜りで構成されるモデルを定式化し,地質条件・マグマの岩石学的性質を与えるとマグマ噴出率とマグマ溜りの圧力の時間発展が出力される順問題モデル(以下「マグマ供給・噴出系モデル」と呼ぶ)を構築した.このモデルは,実際に観測される多様な噴火推移の特徴を再現するとともに,噴火推移を支配する物理過程の影響を数理的に明確に表現するものであり,当初計画において設定した条件を満たすものであることが確認された.また,不連続な遷移過程を含む非線形逆問題の一般理論を確立した上で,それを本研究課題で構築したマグマ供給・噴出系モデルに適用した. その結果,噴火時のマグマ噴出率および火山周辺の地殻変動データからマグマ供給・噴出系モデルの主要パラメータ(粘性抵抗,マグマの含水量,火道からの脱ガス効率)を推定する逆問題の数理構造が解明され,データ同化による噴火推移予測手法の理論的枠組みを確立することができた.
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2026-03-31
【配分額】4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)