凍上現象のメカニズムに関する実験的研究
【研究分野】自然災害科学
【研究キーワード】
凍上現象 / 不凍水 / 氷晶析出 / アイスレンズ / NMR / 分子動力学
【研究成果の概要】
凍上現象のメカニズムを明らかにする目的で、本研究では、凍上性の強い土試料と多孔質体試料を用いた凍上実験、電場の下での凍土中の不凍水の移動に関する実験、NMR法を用いた凍土中の不凍水膜厚さの温度依存性に関する実験、解析、分子動力学(MD)を用い不凍水の挙動に関する数値実験などを行った。本研究で得られた成果を要約すると以下の通りである。
1)粒子間の結合力の強い多孔質体(大谷石)を用いて、氷晶析出面の温度と氷晶析出速度との関係を求めた。氷晶析出面の温度の低下と共に氷晶析出速度は単調に減少した。この結果は、温度が低下すると共に不凍水膜厚さが薄くなることや不凍水の粘性係数は増加することによって説明されることがわかった。
2)凍上性の強い土試料(藤の森粘土、苫小牧シルトなど)を色々な温度勾配、凍結速度の下で凍結し、実験終了後、凍土中の氷晶析出状況の光学顕微鏡写真を撮り、凍土中の氷晶析出量を画像解析により求め、氷晶析出量と凍結速度、試料中の中の温度勾配との関係を求めた。
3)電場をかけた状態で凍上実験を行い、電場の下での不凍水移動量を測定した。この電気浸透による水分移動量は凍上による水分移動量と同程度になり得ることがわかった。
4)土試料、多孔質体の不凍水量の温度依存性をNMR法を用いて測定した。実験結果と表面力がファンデルワールス力や電気拡散2重層によるとした場合に計算される不凍水膜厚さとの関係を比較した。
5)不凍水のミクロな挙動を明らかにするために、分子動力学法を用いて計算機実験を行った。ここでは壁面が流体の運動に及ぼす影響について検討した。壁面の存在により流体系の構造はバルクに比べ秩序化し、拡散係数はバルクな状態に比べ1オーダー小さくなることがわかった。
【研究代表者】