古代末期~中世におけるTlos市領域の流通インフラと農耕・居住区域の復元
【研究キーワード】
花粉・珪藻・胞子化石 / 気候変動 / 土壌コア / 生態史 / 城壁 / 環境史 / 湖底土壌 / 河川舟航 / 史的環境変化 / 港湾施設 / 花粉・珪藻・胞子分析 / 古代末期 / ビザンツ期 / 流通ネットワーク / 居住区域 / 歴史的エコシステム
【研究成果の概要】
2019年度については、現地研究協力者のアクデニス大学教授タネル・コルクート氏らと、今後の研究の進め方について、まず、議論を行った。その結果、トロス市域内の、新規発掘は、これまでの発掘成果の取りまとめが行われていないことから、難しいと判断され、発掘を伴わない、城壁の年代決定調査、および、建築階梯調査を優先して行うこととなった。まずは全体像を確かめるため、現地調査を行い、調査すべき城壁を平面図にマッピングした。
河川流域調査については、エセンチャイ川流域に、調査に最適な沼沢地が残っていないことが問題であるということが明らかになった。そこで、あらたに現地協力者となったスレイマンデミレル大学准教授チェティン・シェンクル氏と議論した結果、エセンチャイ上流から100km北東にあるエベル湖、およびその主水源であるアカルチャイ川流域において、堆積土壌を採取し、花粉化石、珪藻化石、胞子化石の調査を行うとともに、重金属の含有割合調査、鉛同位体比の変遷調査を行うことが、小アジア南西部の中広域の植生、環境変化、人為的活動の痕跡を知るために、最もふさわしいと判断された。エセンチャイ河谷は、河川舟航および陸上輸送で、アカルチャイ川とエベル湖の盆地につながっており、特に、文献資料や考古資料による証明を欠く、中世初期から中世盛期における中広域の自然環境圏、および流通圏の存在を確かめるためには、想定される圏域の両端での調査が不可欠だからである。次年度以降の本格調査に備え、事前調査を行い、堆積土壌の採取とその分析を開始したが、少なくとも過去1万年の土壌は採取できることが想定されている。
倉庫遺跡等、人工建築物と自然環境・交易流通路の関連については、エセンチャイ河谷での調査からエベル湖盆地での調査に対象地域が変更になったことから、倉庫遺跡の探査に加え、橋梁、および、川港遺跡の探査をあらたな調査対象として加えた。
【研究代表者】