歴史地震学の新展開ー地震史料のGIS分析ー
【研究キーワード】
歴史地震 / GIS / 歴史地名 / オープンデータ / 歴史災害
【研究成果の概要】
2021年度は他の競争的資金も獲得し,これも利用して地震史料のGISデータ化と分析を行った.1662年寛文近江・若狭地震について,地震史料から868件の地名抽出を行い,そのうち715件の地理座標を特定した.また1703年元禄関東地震については,1202件を抽出し1070件の座標を特定した.1854年安政東海地震については新出史料から被害分析を行っている.これらのデータは整理後GitHub上などで公開し,歴史地震GISデータのオープンデータ化を推し進める.前年度進めていた1596年畿内の地震について,作成したGISデータをもとに震度判定を行い,先行研究の震度判定について検証した.その結果,史料分布の偏り,判定者の先入観,史料解釈の誤りの可能性等があり,正しく地震断層の位置を推定できなかったとの結論に達した.本研究については論文として投稿中である.
本年度の作業および分析によって,GISデータが生成されただけでなく,歴史地名の扱い方に関する課題も明らかになった.具体的には,特定の地域に同じ小地名が複数存在することや,同音異字地名の存在,具体的な地名が記述されず知行高のみ記される例など,歴史地名の機械的な処理が難しい事例である.将来的に史料中の地名を機械的に処理する場合の課題といえる.1596年の地震に関する震度の検討については,宇佐美(2013)において震度判定過程の検証が必要と指摘されており,これを実施したものである.なお本地震の地理座標付き震度データについてはGitHub上で公開しており,研究目的である他者による検証可能性や再現性を確保している.
研究計画のうち,内陸地震2件のGISデータ化と1件の分析,海溝型地震1件のデータ化が済んだ.また1854年安政東海地震(海溝型)についてはデータ化と分析を同時並行で現在進めている.
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)