南極陸上植生コアに刻まれた人新世における地球環境変動の解析
【研究キーワード】
人新世 / 地球環境モニタリング / コケ植物 / 植生コア / 重金属 / 地球環境 / 環境モニタリング / 環境変動 / 南極 / 陸上植生
【研究成果の概要】
本研究では、南極地域に生育するコケ植物からなる植生コアの解析によって、人新世における人間活動が地球環境に及ぼしてきた影響を知る事を目的としている。解析用のサンプルは、日本南極地域観測隊が取得してきた昭和基地周辺からのものを使用し、南極外からの環境汚染の影響と共に、昭和基地などの南極観測活動が現地環境に及ぼす影響も検出する。
当該年度は予備調査として、南極昭和基地および周辺地域から採取されたコケ植生試料のコケ植物体表層、内部、および土壌の水銀含有量の分析により、南極における重金属汚染のバックグラウンド値を明らかにすること、基地活動の影響の有無を検出すること、また深度別計測の試行により年代解析の可能性を確認することを計画した。
昭和基地周辺地域から採取されたコケ試料の分析は順調に進み、基地周辺と基地活動の影響が少ないと思われる遠隔地の比較、短い植生コアを用いた汚染の時間変動の解析試行を実施出来た。その結果、基地近くのコケ植生では水銀蓄積量が多いこと、また土壌よりも高濃度の水銀がコケ植物体から検出され、コケ植物による濃縮が起きている可能性が明らかとなった。一方、遠隔地のコケ植生からも比較的高濃度の水銀が検出されることがあり、南極地域全体のバックグラウンド汚染が高い可能性が示唆された。植生コア中の深度別解析から時間変動を見ると、表面から数㎝下に高濃度の水銀が検出され、過去に汚染大気に暴露された可能性が考えられた。今後、年代解析などとあわせた総合解析により、南極外、および昭和基地からの汚染の時間変動解析が期待される。
予算として、植生コアの深度別年代測定の委託費を計上していたが、当該年度は汚染の現状を確認するためのパイロットスタディーを重視して水銀分析を優先することとしたため、委託費は使用しなかった。
【研究代表者】