ヨウ素の濃縮と循環に関する生物地球化学的研究
【研究分野】地球宇宙化学
【研究キーワード】
ヨウ素 / ヨウ素-129 / 生物地球化学 / 分析法の検討 / 化学形態 / 鹹水 / 土壌 / AMS(加速器質量分析)
【研究成果の概要】
我が国は世界のヨウ素の約4割を産出しており、地下1000-2000mに存在する鹹水(塩分濃度が高い水)が原料となっている。しかし、その起源についてはあまり良く分かっていない。また、ヨウ素の環境における濃縮や動態に微生物が影響していると考えられるが、そのメカニズムなどについては不明である。更に、原子力施設から長半減期核種である^<129>I(半減期:1600万年)が環境中に放出されており、環境安全の面からそのレベルを調べ挙動予測を行うことが求められている。本研究では、ヨウ素の環境における分布と生物地球化学的挙動を調べるために、安定ヨウ素及び^<129>Iの高精度・高感度分析法の検討、地球化学的試料の分析、微生物を用いたヨウ素の濃縮や化学形態変化について研究を行った。得られた主な結果は以下の通りである。
(1)様々な地域から採取した地下水試料に含まれるヨウ素と臭素をICP-MS法で分析したところ、千葉県以外にも新潟県、秋田県、北海道、群馬県などでヨウ素濃度が高い地下水が見つかった。また、南海トラフのメタンハイドレート地帯の間隙水も高ヨウ素濃度示すことが分かり、メタン集積との関連性を指摘した。
(2)加速器質量分析法(AMS)を用い日本各地で採取した土壌試料(森林土、畑土、水田土)中の^<129>Iを分析した。^<129>I/^<127>I比として10^<-11>オーダーまで感度良く測定することができた。そのため、以前行われてきた放射化分析法では検出できなかった一般地域における^<129>Iに関するデータも得られた。これらは、放射性ヨウ素の環境挙動を調べる上で貴重なデータとなろう。
(3)ヨウ素の化学形態変化に関与すると考えられる微生物についての研究も進み、メチル化作用、酸化作用、還元作用、濃縮作用についての興味深い知見が得られた。化学形態別分析手法としては、イオンクロマトとICP-MSを組み合わせた方法を確立できた。
このように、開発したヨウ素の分析法を用い、ヨウ素の地球化学的挙動についての様々な新しい知見が得られた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
天知 誠吾 | 千葉大学 | 園芸学部・自然科学研究科 | 助教 | (Kakenデータベース) |
松崎 浩之 | 東京大学 | 大学院・工学系研究科・原子力国際専攻・加速器管理部 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
松本 良 | 東京大学 | 大学院・理学系研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2005 - 2007
【配分額】15,900千円 (直接経費: 15,000千円、間接経費: 900千円)