最先端の質量分析技術を用いた人為起源有機エアロゾルの生成過程の研究
【研究分野】環境動態解析
【研究キーワード】
環境分析 / 都市大気 / 有機エアロゾル / 質量分析計 / 低分子ジカルボン酸 / 二次生成
【研究成果の概要】
1.エアロゾル質量分析計(AMS)の測定精度の向上
AMSの粒子捕集効率は湿度に依存するため、これまでの研究では測定精度の安定性に問題があった。その改善のため、外気の露点に応じて湿度をコントロールするシステムを新たに開発し、実大気条件においてイオンクロマトグラフ法(PILS-IC)および熱光学法(EC/OC)との相互比較を行った。その結果、湿度コントロールによってAMSの測定精度は20%程度で安定化できることを実証した。この測定精度は、実大気エアロゾルの科学解析を行う上で充分な精度である。
2.実験室における有機化合物の質量スペクトルの分析
水溶性有機エアロゾルの重要な成分である低分子ジカルボン酸について、実験室において質量スペクトルを詳細に調べた。シュウ酸(C_2)、マロン酸(C_3)、コハク酸(C_4)、フタル酸(C_8)等について調べた。一方、フィルター捕集-GC分析法により、実大気中の低分子ジカルボン酸の濃度を測定した。これらのデータを組み合わせることにより、実大気におけるAMSの質量スペクトルに対する低分子ジカルボン酸の寄与を定量的に評価した。
3.東京における人為起源有機エアロゾルの濃度変動とその生成過程の解明
燃焼空気のトレーサーであるCOを用いて、AMSデータから一次有機エアロゾル(POA)と二次有機エアロゾル(SOA)を分類する方法を考案した。東京都心におけるPOAとSOAの日変動・季節変動を明らかにするとともに、SOAの大部分が水溶性であることを示した。また、東京郊外で得られたデータから、汚染空気の輸送過程におけるSOA生成速度を推定した。その結果、半目程度で有機エアロゾル濃度は4-5倍になりうることを明らかにした。世界的に広く用いられる収率モデルはこのSOA生成速度を大幅に過小評価しており、現状のSOA生成過程の理解に大きな不確定性があることを示した。
【研究代表者】