生物硬組織を指標とした原発事故直後の河川水中の生物利用性Cs-137の復元
【研究キーワード】
セシウム / 河川 / ストロンチウムー90 / ヨウ素-129 / 放射性セシウム / 化学形態 / ストロンチウム-90 / ヨウ素-129 / Sr-90 / I-129
【研究成果の概要】
福島第一原発事故直後の過渡期には,放射性核種の河川生態系への移行プロセスはその後の変遷と比べ量・質共に桁違いに大きく,多大なる影響を及ぼす.事故直後1ヶ月間で生物利用性の高い溶存態・移行性粒子態Cs-137が河川環境中でのどのように変遷していたかを明らかにするため、カワシンジュガイの貝殻を用いた復元を試みた.その結果、震災後の1カ月の期間内にSr-90およびI-129ともに震災前に対して500倍以上の濃度増加があった。また5月以降に比べても10倍以上の濃度増加に相当し、事故直後の過渡期に水溶性および有機体成分として多くの放射性Csが河川へと流入したことを示した.
【研究の社会的意義】
河川環境下で生息する生物にとって,河川水から溶存態として直接的に,あるいは移行性の高い有機態から食物網を通じて間接的に生体内へ取り込まれる放射性セシウムの動態に関する事故直後の情報が欠損している.事故直後の放射性セシウムの変遷は,詳細観測開始後の数か月から数年単位の変動から遡って予測されたものであり,過渡的な特性を反映させることは困難である.事故直後の動態を解明することで,今後,原子力関連施設での事故が再発してしまった際にも,河川環境に生息する生物への影響評価,さらには災害時の飲用水確保の対策としても有益な知見を与える.
【研究代表者】