「脳の形成」と「生活習慣病予防」に運動が必要なわけを探る-個体の運動解析モデルと細胞による運動解析モデルの開発-
【研究分野】体育学
【研究キーワード】
脳 / 学習 / 適応 / ストレスタンパク質 / ストレス応答系 / HPA軸 / 細胞 / 脳内アミン
【研究成果の概要】
運動することが人間それ自身の脳及び身体の形成に必須な要因であり、本質的な課題であることを示し、その科学的背景を明らかにし、現時点で考え得る研究モデルを検討した。シンポジウムを2日間にわたり2部構成(第1部:総括的理解:個体の運動から運動の生命科学的基盤まで、I.運動は脳によって制御され、脳は運動により育てられる、II.運動を生命適応により理解する、第2部:運動の個体・細胞・分子の研究モデル、I.'動的な生命'を細胞から解析するモデル、II.動物の運動を解析するモデル、III.ヒトの運動を解析するモデルとして研究モデル)で検討を行った。運動は脳により制御され実現するが、運動すること-つまり出力することにより脳が形成される。その背景として脳内アミン、各種アミノ酸、レプチンなどのホルモン、自律神経系、ストレス応答系などの関与を解析するモデルが出された。ランニングが、学習能をもつ脳の基本的過程に重要な役割を示すことが示唆された。さらに生命科学的に、運動による学習や適応過程の機構として、細胞骨格系、ストレスタンパク質の一群が重要な鍵を握っていることが示された。また運動が引き起こす機械的刺激に対する応答の概念(跡見/αB-crystallin分子による細胞骨格安定化応答)を提出した。2日目には、細胞モデルの鍵として接着・細胞外基質・核骨格・細胞骨格及び動的観察方法及び機械的刺激応答システムモデルが提案された。動物モデルにおいては、代謝基質の取り込みの制御などの研究モデルが議論された。特別講演として、生物にとっての時間(鍋島陽一氏)、運動と脳(伊藤正男氏)、運動特異的に活性化されるAMP活性化リン酸化酵素(Winder)、感覚と脳(小林茂夫)について討議された。リズム運動と身体への働きかけで脳障害児を正常発達に導いた実践活動の科学的根拠を議論した。
【研究代表者】