ベトナム北部における開放政策の展開と地域的一体性の変容
【研究分野】広領域
【研究キーワード】
ドイモイ(刷新) / 改革・開放 / 市場経済 / 社会主義 / 国境貿易 / ベトナム北部 / 中国南部
【研究成果の概要】
1991年の関係正常化以来,中国・ベトナム両国の政治・経済関係は飛躍的に前進している。しかし,中国の経済成長が著しいといわれるわりには,そのプレゼンスはモンカイ・ランソンなどの一部地域を除けばその他の中越国境地帯やベトナム北部においても顕著なものとはなっていない。その要因として以下の点を指摘することができる。
1 中国側(広西・雲南)が概して国境を越えた広い範囲での経済発展を追求する傾向があるのに対して,ベトナム側は国境付近のごく限られた地での経済活動を想定している。
2 中国からの投資要望を受け付ける窓口がベトナム側には少ない。
3 中国の地方政府(州・県レベル)は国境貿易も含め対外経済活動に関する自主裁量権をもっているのに対し,ベトナムでは地方政府(省人民委員会)にそのような権限はなく,中央政府が対外経済政策決定権を握っている。
4ベトナム政府は国境経済地帯に対する政策に関しても,モンカイ,ランソン,ラオカイなど一部地域で試験的に実施したのち,全般的な政策を提起するため,政策ができあがるまでに時間がかかる(4〜5年)。
他方,中越両国の隣接し合う地方政府の幹部の間では,ライチャウ省と金平県(雲南)のように,沿海地域に比べ経済的に不利な条件のもとに置かれている内陸地域では,今後の地域開発の方向性が国境を越えた範囲(雲南-ライチャウ-ラオス)で展開される点で,認識が一致しているところもある。ベトナム政府がこうした動きにどのように対処するかが大きな鍵となってくるが,いずれにしても中央と地方の権限のあり方も含め,ベトナム北部の地域的再編が進む可能性も十分に存在していることは確かであり,インドシナ内陸地域の動向を引き続き調査研究していく必要があると考えられる。
【研究代表者】