行政学の基礎概念の歴史的変遷と現代的再構成
【研究分野】政治学
【研究キーワード】
内閣制度 / 官僚制 / 政府間関係 / 予算管理 / 計画・調整 / 情報活動 / 政策評価 / 行政責任 / 政界評価 / 行政国家 / 地方自治 / 財務管理 / 政策手段 / 情報 / 人事管理 / 計画調整
【研究成果の概要】
行政学を支える基礎的な概念は、主として1920・30年代のアメリカにおいて形成された。そこでは、(1)行政が自律した体系を構成しており、(2)その体系には最良唯一の管理方式が存在する、という前提の下に基礎的な概念が形成されたといってよい。「予算管理」「人事制度」等の概念は、この時期から出発している。
1940年代以降、「行政国家」化の現象にともなって行政の領域が拡大する一方で、社会との間の相互作用によって行政の効率性や有効性が評価されるようになる。それにともなって、固有の管理方式をもつ自律した体系としての行政にかわって、社会経済に組み込まれた公共的意思決定の体系としての行政観を前提とした概念構成が試みられた。「意思決定」「計画・調整」等の概念は、このような行政観の変化を反映しているといえよう。さらに、行政が他のシステムとの相対的な位置から捉えられるようになって、その関係を主軸とした概念構成が試みられた。「政府間関係」「内閣制度」などは、この関係を主軸とした概念把握の試みであった。
社会経済に組み込まれた公共的意思決定としての行政が、社会からの入力を中心とした概念構成を生み出したのに対して、行政から社会経済への働きかけとしての出力を中心とした視座も1960年代以降登場する。「政策手段」「情報活動」「政策評価」といった、個別機能を手がかりとした概念形成がその例である。
以上述べてきたような実態概念・管理概念から機能概念を中心とした視座の変化は、新しい公共管理論によって加速される一方で、これへの対応も試みられている。「行政責任」論の再構成は、このような脱構築に対して行政学の留め針を確保しようという試みでもある。
【研究代表者】