西アフリカ経済の発展径路に関する歴史的研究ー繊維産業を事例にして
【研究キーワード】
西アフリカ / 発展経路 / 繊維産業 / グローバル・ヒストリー / 熱帯
【研究成果の概要】
本年度は、先行研究の整理と資料の読解を続ける一方で、日本語と英語で成果を発表した。主な成果については、以下のとおりである。
まず、大西洋奴隷貿易の最盛期から換金作物貿易への移行期(18世紀から19世紀半ば)に焦点を当てた日本語単著(『奴隷貿易をこえて』名古屋大学出版会、2021年)を刊行した。西アフリカにおける繊維需要・消費に注目することで、西アフリカと世界経済の関係を問い直した。とりわけインド綿布が大西洋奴隷貿易・大西洋経済の展開に果たした役割を評価することで、通説の「三角貿易」論を別のモデルに置き換える必要性を指摘した。この論点は、LSE経済史学科主催のワークショップとブラジルの植民地史会議(いずれもオンライン会議)においても発表した。また、上記の論点に関連して、商品連鎖論の観点も踏まえた論文も執筆した。この論文は、22年度に論文集の一部として刊行される予定である。
次に、植民地期の西アフリカ経済にかんする文献研究を進めた。それを通じて、植民地化以前に始まっていた換金作物の輸出生産が植民地政府の財政収入にとっても重要になっていた点をはじめ、換金作物生産における移住労働や奴隷の役割など、植民地化以前と植民地期の連続性と変化にかかわる基本事項について確認した。それを踏まえて、植民地化以前から植民地期にかけての経済発展にかんする日本語論文を執筆した。そこでは、他の熱帯地域の経済発展との比較研究を可能にするための論点を強調している。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2020-04-01 - 2024-03-31
【配分額】2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)