人類学的フィールドワークを通じた情動研究の新展開:危機を中心に
【研究分野】文化人類学・民俗学
【研究キーワード】
情動 / アフェクト / 能動的受動性 / 日常 / 危機 / 身体 / アート / affect / フィールドワーク / 芸術 / 知性 / 人類学 / ハザード
【研究成果の概要】
本研究は、理性に対置されてきた「情動」こそが人と人を結びつける社会性の根幹にあるという理論的な展望と、身体と感性を基盤として現場から問題をたちあげてきた人類学的な臨地調査の方法論とを接続することにより、情動生成のプロセスを実証的に解明することを目的とした。近年多発する災害・紛争・テロリズムといった危機的状況の只中でも人々は日常性を維持すべく共同的な生を営んでいる。本研究では、日常的な生活の局面を基盤とし、偶発的・受動的に巻き込まれたり、逆に能動的に統制される局面を多角的に考察することで、情動研究に新たな展開をもたらし、世界の見方を根源的なところから問い直し、生の現実の新たな側面を提示した。
【研究の社会的意義】
情動(affect)は、存在と関係を同時に捉えることを可能にする概念であり、本研究はそうした視点からどのような世界の新しい捉え方が浮上してくるのかを、様々な分野・テーマの検討を通して具体的に示したものであり、人文学・社会科学にとって大きな学術的意義を有する。また、新型コロナウイルス感染症の蔓延が我々の生活のあり方を瞬く間に一変させた状況からも、人間とそれをとりまく諸存在のあり方、つまり生きる世界のあり方の転換が必要とされており、本研究が提案しているラディカルな視点移動はこうした今日の社会的要請と深く響き合うものであるといえる。
【研究代表者】