日本語の文理解に関する心理言語学的研究
【研究分野】言語学・音声学
【研究キーワード】
日本語 / 文理解 / 心理言語学 / 統語解析 / 空主語文 / かき混ぜ文 / 袋小路文 / スクランブリング / ガーデンパス / 終助詞 / 韻律情報 / 作動記憶 / 再解釈 / プライミング / 文理解(文処理)モデル / ワーキングメモリ / 対照言語学 / 韻律 / 漢字認知
【研究成果の概要】
人間の言語理解のプロセスを明らかにするためには、心理学的な実験の成果を踏まえた上で言語学の理論に基づいた説明をめざす心理言語学的研究が必要である。しかし、日本においては、言語学と心理学という2つの異なった学問領域においてそれぞれ研究が進められてきたために、互いの分野の研究成果を共有し、十分に活用することはあまりなかった。それゆえに、本研究においては、「日本語の文理解」のプロセスに注目し、言語学・心理学の分野において今までに行われて来た研究を総合的に検討するとともに、今後の研究の方向性を示すことを目指した。そのためには、日本語の文理解研究において中心となる研究者集団が結集して、各自が蓄積してきた知見を集約・整理する必要があった。具体的には、主として次のような構文の研究を行った。(1)主語が省略された「空主語文」において、文末動詞が出現する以前にどのような処理が行われているのか。(2)通常の語順ではない「かき混ぜ文」の理解は困難であるのか。(3)途中まで間違った解釈をしてしまう「袋小路文」はなぜ理解困難なのか。(4)間違った解釈を訂正する「再分析」の際にどのようなことが起こっているのか。
本研究は、言語学者と心理学者の共同研究であるということから、理論と実験とのバランスの取れた方法論に基づいていると言えるであろう。また、脳神経科学や言語障害研究との連携や、海外の研究者との交流を通して、より深くかつ広く研究が進展していく可能性がある。人間の言語理解は、高度な認知処理のひとつの典型であるから、言語理解のメカニズムを解明することにより、人間の情報処理のメカニズム一般への洞察を得ることができる。
【研究代表者】