江戸時代に作製されたさく葉帖の植物標本としての特性
【研究キーワード】
植物標本 / 江戸時代 / おしば帳 / 本草学 / 渋江長伯 / 北海道
【研究成果の概要】
東京大学総合研究博物館所蔵の「北遊草木帖」をはじめとするおしば帳は、江戸時代後期(1799年)に北海道調査を行なって植物標本を収集した渋江長伯によって作製されたとされる。おしば帳は、和紙に植物を貼り付けて和本の体裁に綴じたものであるが、標本は虫害による損傷を受けており、貼り付けてあるテープ(和紙)も剥がれているものが多く、そのままではおしば帳を開閉する際に標本が壊れてしまう。そこで標本の同定に先立ち、標本の補修を行なった。「北遊草木帖」については、補修の際に参考となる資料(写真乾板)が北海道大学の北方資料データベースの中から発見され、これを参照することによって「北遊草木帖」については補修作業を終えている。当該年度はその経験に基づき、出来るだけ他のおし葉帳の補修も進めることとした。引き続き「北遊草木追加帖」さらに「救荒野譜」と「庚午花帖」の補修を行なっている。補修が終わったものから順次高精細画像の撮影を行い、標本に付された標本の同定を進めている。また、おしば帳に付された漢名などについては、撮影した画像に基づいた植物名のリストを引き続き作成中である。これらについては、本草書やおしば帳と同時代の本草学資料、北海道の開拓、調査関係資料を探索し、当時の植物の分類につ いて検討する。これらの標本と関係がふかいとも考えられる「蝦夷草木さく葉帳」が、北海道大学総合博物館に保存されているが、これらは 宮部金吾によって 同定されており、すでに画像データベース化されている。これらの植物標本のリストに基づき、現在の分類に照らして標本の同定を見直している。引き続き、現在の 北海道の植物レッドデータブックや採集記録との比較を行なっていく。
【研究代表者】