縄文家族論の新展開:廃屋墓出土人骨群の血縁関係と埋葬過程の解明
【研究キーワード】
古人骨 / 廃屋墓 / DNA分析 / 年代測定 / 縄文時代 / 家族 / aDNA分析 / 食性分析 / 古病理
【研究成果の概要】
廃屋墓(はいおくぼ)は縄文中期に関東地方を中心に検出される、住居内に遺体を埋葬する特殊な葬法である。かつては出土人骨群は病気や事故により同時に死亡した、その住居の住人=“家族”であるとされ、縄文時代の家族関係や婚姻関係といった社会的組織を解釈する基盤となってきた。近年は何らかの関係をもつ個体をある程度の期間をおいて一つの廃屋に埋葬したとの考えが主流となっている。
本課題の目的は複数の個体が出土している廃屋墓例において、これらの個体間の生物学的な関係を明らかにすることである。廃屋墓の人骨群に遺伝的血縁関係や形態的類似性があるのか、同居していた“家族”とみなせるのか、人骨群は埋葬されたのか遺棄されたのかを問い、骨考古学、形態人類学、骨科学(DNA分析、年代測定、食性分析)的観点から科学的に分析し、親族関係と埋葬プロセスを明らかにしようと試みている。
初年度の本年は、複数の機関に収蔵されている人骨資料の調査を行い、発掘記録や文献と照らし個体鑑別、年齢推定、性別判定を行い、理化学分析のための下準備を行う予定であった。しかし、コロナ感染症の影響により、収蔵機関へ調査に向かう事が極めて困難な状況となった。そのため、発掘記録や文献の収集を行い、発掘状況写真を細かく分析することで出土状況の確認を中心におこなった。また、人骨の形態観察としてタフォノミーとストレスマーカーの項目について検討し、データ収集の方針を決定した。
【研究代表者】