教育現場における立体把握模倣による空間認識の研究~学ぶはまねる~
【研究分野】芸術学・芸術史・芸術一般
【研究キーワード】
模刻 / 3Dデータ / 立体把握 / 木彫 / アウトライン / 断面線 / イメージ学習 / 文化財 / 3D / 彫刻 / 構造 / 保存修復 / 仏像 / 模造 / 立体 / 空間認識
【研究成果の概要】
本研究では、3Dデータ活用による模刻制作等から、ヒトがどのように立体を認知し造形していくかという点を追究してきた。その結果、次のような兆候が示された。
原本像(オリジナル)の3D計測値は、造形のバランスを迅速かつ的確に把握できるものであり、模刻制作者(彫刻経験のある被験者)の感覚的・技量的差異による彫刻の完成度(オリジナルと似ているかそうでないか)の違いが減少した。
それは本研究室の3Dデータによる模刻制作を始めた頃から、本研究室大学院生作品の全体的な完成度向上という成果からも表れている。
このことは、造形把握の基礎として彫刻家が修行期間に繰り返し訓練し体得する「造形のバランス把握」を、3Dデジタルデータという3次元的な「物差し」によって、ある一定の範囲をもって代替することが可能といえる。
一定の範囲とは、具体的な彫刻制作、特に木彫制作の段階であらわすならば、『粗彫り』である。(当研究室ホームページ「online lecture」参照)
『粗彫り』は,木彫制作において完成度を決定する重要な段階である。粗彫りを行う上での注意点が、彫刻完成時のアウトラインをなぞるように彫り進めるという意識である。このアウトラインは3Dデータ上の断面線にあたるものであり、いうなれば地形図の等高線のようなラインを立体の表面上で追いかけるような作業である。
この作業は彫刻完成時のアウトラインを常にイメージしながら作業するため、相当の習熟を要するものであるが、前述の3Dデータ上で作成した断面線を、型紙として実際の模刻作業で使用する他、モニター上で原本像の立体画像を等高線状に断面線を描出することによって、粗彫りを行う具体的なイメージの学習が短期間で可能となった。
この事象から、彫刻作業における立体把握、すなわちヒトがどのように立体を認知し造形していくかという点を論じる上で、3Dデータ上での断面線によるイメージ学習の成果は大きいと考えられる。
【研究代表者】
藪内 直樹 (藪内 佐斗司 / 薮内 直樹 / 薮内 佐斗司) 東京芸術大学 大学院・美術研究科 教授
(Kakenデータベース)