近代の産業遺産の保存と活用に関する研究-歴史的価値の保存と多様で魅力的な活用―
【研究分野】建築史・意匠
【研究キーワード】
文化財 / 近代産業遺産 / 保存と活用 / ヨーロッパ / アジア / 日本 / 欧米 / オランダ / イタリア / イギリス / 台湾 / 中国 / フランス / 北海道 / ドイツ / シンガポール
【研究成果の概要】
近代産業遺産の保存では、広大な敷地に様々な形態と規模の多数の建築物から構成されるなど、また、活用では省エネルギーなど、様々な課題が多く、そのため、本研究において調査を行った諸外国と国内各地の多数の事例の中には「多様で魅力的な活用」を実現している事例は数例に留まっている。
斎藤英俊らが関わった旧富岡製糸場の国宝西置繭所保存・活用事業は、日本建築学会から2022年度の業績賞と作品賞を授与された。作品賞の選考理由には以下のように述べられている。「新しい保存思想が国・自治体の関係者や専門家・技術者らによって共有され、高度な水準で具現化されたことは画期的である」この受賞は本研究の大きな成果の1つといえる。
【研究の社会的意義】
日本の近代の産業遺産は、明治以降の近代化の歴史の証言者であり、文化財として保存し次世代に継承することが重要である。近代の産業遺産の保存は従来の社寺建築等とは異なった多くの課題を有していて、新たな目的を創出し、適切な活用を図らなければ、その保存は困難である。本研究においては、国内および諸外国の事例研究を行い、様々な知識を得ることができた。その知識を世界遺産である旧富岡製糸場の国宝西置繭所の修理事業における活用計画に活かすことができた。その成果は日本における近代産業遺産の保存・活用の先駆的モデルとして、多くの所有者や専門家に希望と勇気を与えることとなると考えている。
【研究代表者】